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HYROXにドーピング検査はある? 喘息の吸入薬やステロイド薬を使う人が出場前に確かめること
HYROX(ハイロックス)の公式ルールブックは、すべてのレーサーにアンチ・ドーピング規定を守ることを求め、いつでも無作為に検査を行う権利を留保しています。薬を使っている人の出場を一律に禁じる決まりではなく、確かめるのは、薬の成分が禁止表に載るかどうかと、載る場合に治療使用特例(TUE)を申請しているかどうかです。公式ルールブック・アンチ・ドーピング規程・2026年版の禁止表・TUEの申請書から、喘息の吸入薬やステロイド薬を使う人が出場前に確かめることを整理しました。

HYROX(ハイロックス)の公式ルールブックにはアンチ・ドーピングの章があり、HYROXはいつでも無作為にドーピング検査を行う権利を留保しています。ただし、この決まりは薬を使っている人の出場を一律に禁じるものではありません。出場前に確かめることは2つあります。使っている薬の成分が禁止表に載っているかどうかと、載っている場合に治療使用特例(TUE)を申請しているかどうかです。
ルールブックは、この決まりを「HYROXイベントに参加するすべてのレーサー」に向けて書いています。一方で、詳しい手続きを定めたアンチ・ドーピング規程は、英語版の表紙に「ELITE DIVISION」とあり、友達やパートナーと出る一般の参加者にどこまで及ぶのかは、文面からは言い切れません。喘息の吸入薬やステロイドの飲み薬を使っている人は、自分も対象になる前提で準備しておくほうが確実です。
この記事では、公式ルールブック(2026/27シーズン)、HYROXのアンチ・ドーピング規程(英語版と日本語版)、英語版の規程に収録されている2026年版の禁止表、TUEの申請書を突き合わせて、薬を使っている人が出場前に確かめることを整理します(2026年10月5日確認)。個別の薬や商品が禁止に当たるかどうかは、この記事では判定していません。成分名をもとに、主治医か薬剤師に確かめてください。持病がある人の参加条件そのものは参加条件の記事にまとめています。
HYROXのルールブックに書かれているアンチ・ドーピングの決まり
公式ルールブックには、アンチ・ドーピングの章があります。シングルスとダブルスのルールブックでは第9章、リレーでは第7章で、3冊とも同じ文面です。書かれている決まりは次の4つです。
- レースの公正さを損なうおそれのある禁止物質や禁止方法の使用には、ゼロトレランス(一切容認しない)の方針をとります
- HYROXの大会に出るレーサーは全員、主催者が定めるアンチ・ドーピング規定を守るものとされています。レース中にも非競技時にも、禁止物質の検査に従うことがこれに含まれます
- HYROXは、公平でクリーンなレース環境を保つために、いつでも無作為に検査を行う権利を留保しています
- 治療使用特例(TUE)は、レースの28日前までに申請できます
この章に、オープンとプロのような部門や、競技レベルで扱いを分ける記述はありません。
何が禁止物質に当たるのか、違反とされるとどうなるのかは、ルールブックではなく、別の文書の「HYROXアンチ・ドーピング規程」に書かれています。ルールブックは、規程とTUEの申請書の確認先として、公式サイトのルールブックのページ(hyrox.com/rulebook/)を挙げています。
禁止される物質はWADAの禁止表で決まる
HYROXアンチ・ドーピング規程は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の世界アンチ・ドーピング規程(2021年版)と、ドイツの国内アンチ・ドーピング機関(NADA)の規程をもとに作られています。HYROXを運営するHYROX Worldは民間の主催者で、WADAの規程の署名当事者ではないため、必要な範囲で内容を修正していると序文に書かれています。
何が禁止されるかは、WADAが公表する禁止表で決まります。規程は、禁止表とその改定が、原則としてWADAの公表から3か月後に効力を生じると定めています。HYROX Worldは、求めがあれば禁止表のデジタルコピーを提供するとしています。禁止表は改定されるので、出場する時点の版で確かめる必要があります。この記事で引いているのは2026年版です。
禁止表には、競技中も競技外も常に禁止される区分と、競技中だけ禁止される区分があります。「競技中」の期間は、原則として、出場する競技の前日の午後11時59分から、競技とサンプル採取の手続きが終わるまでです。
検出された物質は意図していなくても本人の責任になる
規程は、禁止物質を体に入れないことを選手本人の義務と定めています。違反の立証に、選手の意図、過失、不注意、使用を知っていたことの証明は要りません。検査のサンプルから禁止物質が検出されれば、その物質について本人が責任を負います。
処方された薬でも、補給に使うサプリメントでも、体に入れるものの成分は本人が確かめておくことが前提になっています。規程は、教育について定めた第18条でも、禁止表に載る物質と方法、サプリメントや薬を使うことのリスク、治療使用特例を、伝える内容に挙げています。
検査の対象について、規程は「規程の適用範囲に含まれ、HYROX Worldの規則に拘束されるすべての選手」と書き、大会の会場で行う検査と、大会以外の時期に行う検査の両方を定めています。誰を検査するかはHYROX Worldが裁量で決め、選んだ理由を説明する義務はないとされています。検査を受ける確率や、どの大会で検査が行われたかは、この記事で確かめた公式の文書には書かれていません。
一般の参加者に規程が及ぶかは文面から断定できない
友達やパートナーとオープンの部門に出る人が知りたいのは、この規程が自分にも及ぶのかどうかです。公式の文書の書き方は、次のように分かれています。
- ルールブック(2026/27シーズン)は、「HYROXイベントに参加するすべてのレーサー」が規定を守り、検査に従うと書いています
- 英語版の規程は、表紙が「HYROX ELITE DIVISION ANTI-DOPING CODE 2026/2027」になっています。本文の序文、検査を定めた第5条、発効を定めた第21条に、Elite Divisionの選手に限るという文は見つかりませんでした
- 日本語版の規程(HYROX Japanのサイトで公開)は、表紙が「アンチ・ドーピング規程 2024/25」で、Elite Divisionの語がありません
- 規程は検査の対象を「規程の適用範囲に含まれるすべての選手」と書いていますが、その適用範囲を定義する条文は確かめられませんでした
英語版の規程には、トップ選手の枠組みであるElite 15に触れた条文もあります。第12.1条は、違反の手続きを最初に担当する委員会の詳細を、Elite 15向けのガイド(Elite15 Guide Majors)の規定に委ねています。
英語版と日本語版は、版の表記も食い違っています。英語版の表紙は2026/2027、日本語版の表紙は2024/25で、どちらも本文には2024年9月20日に発効したと書かれています。英語版には、WADAの規程が2027年1月1日に改正されるのに合わせてHYROXの規程も改訂し、2027年1月1日以降に開かれるイベントに適用する版を選手に通知する、という追記があります。
「一般の参加者は検査の対象外」とも「全員が同じ扱い」とも、文面からは言い切れません。ただ、ルールブックは「すべてのレーサー」と書いています。オープンの部門に出る人も、使っている薬が禁止表でどう扱われるかは、出場前に確かめておいてください。
喘息の吸入薬・ステロイド薬・大麻由来の成分の禁止表での扱い
ここでは、身近な薬や製品のうち、2026年版の禁止表に区分がある3つを取り上げます。自分が使っているものがどれに近いかを、先に図で確かめてください。

喘息の吸入薬に含まれるベータ2作動薬
喘息などの呼吸器の薬に含まれることがあるベータ2作動薬は、禁止表のS3という区分で、競技中も競技外も常に禁止されています。禁止表は例として、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール、プロカテロール、ツロブテロール、テルブタリンなどの成分名を挙げています。
このうち4成分には、吸入で使う場合の例外が書かれています。
成分(吸入で使う場合) | 24時間の上限 | 短い時間での上限 |
|---|---|---|
サルブタモール | 1600マイクログラム | 8時間で600マイクログラムまで |
ホルモテロール | 投与量で54マイクログラム | 12時間で36マイクログラムまで |
サルメテロール | 200マイクログラム | 8時間で100マイクログラムまで |
ビランテロール | 25マイクログラム | 記載なし |
この上限の範囲で吸入している場合は、禁止の対象から外れます。例外として書かれているのは吸入だけです。上限を超える量を使う場合や、例外に名前が無い成分を使う場合は、禁止表の文面では例外に入りません。
ルールブックは、喘息用の吸入器や類似の処方器具を、レース中に使ってよい物に挙げています(持ち込みルールの記事で整理しています)。同じ項目の注は、アンチ・ドーピングの決まりをすべての場面で守らなければならないとも書いています。吸入器を持ち込めることと、中の薬の成分と量が禁止表の例外に収まることは、別々に確かめる必要があります。
ステロイド薬(グルココルチコイド)
ここで扱うステロイドは、グルココルチコイドだけです。アナボリックステロイド(蛋白同化男性化ステロイド)は、禁止表ではS1という別の区分で、競技中も競技外も常に禁止されています。
グルココルチコイドは、禁止表のS9という区分です。注射、経口(口の粘膜から吸収させるものを含む)、直腸のいずれかで投与した場合に、競技中に禁止されます。成分の例には、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾンのほか、ブデソニド、フルチカゾン、ベクロメタゾンなどが挙がっています。
禁止表の注は、それ以外の経路について、メーカーが認可を受けた用量と効能の範囲で使う場合は禁止されないと書いています。挙げられているのは、吸入と、皮膚・鼻・目・耳などへの局所の投与です。同じ成分でも、飲み薬や注射なのか、塗り薬・点鼻薬・吸入薬なのかで、扱いが分かれます。
S9は競技中だけ禁止される区分ですが、競技の前に使った分が検査に関わらないとは限りません。TUEの申請書には、競技中だけ禁止されている物質を競技外の時期に使い、そのあとの検査で陽性になった場合のための欄があり、例にS9のグルココルチコイドが挙げられています。大会が近い時期に飲み薬や注射のステロイドを処方された人は、主治医に大会の日程を伝えて相談してください。
大麻由来の成分(THCとCBD)
カンナビノイドは、禁止表のS8という区分で、競技中に禁止されます。大麻(ハシシ、マリファナ)や、天然・合成のテトラヒドロカンナビノール(THC)などが対象です。例外として書かれているのは、カンナビジオール(CBD)です。CBDをうたう製品を使っている人は、THCなど例外に当たらない成分が含まれていないかを確かめてください。
この3つ以外の薬やサプリメントが禁止表に載るかどうかは、この記事では確かめていません。使っている薬の成分名(一般名)を控えて、WADAの禁止表に載る成分かどうかを主治医か薬剤師に聞くのが確実です。
禁止表に載る薬を使っている人が出場前にすること
治療のために禁止表に載る薬を使う必要がある人のための手続きが、治療使用特例(TUE、Therapeutic Use Exemption)です。申請書は、英語の公式サイトのルールブックのページ(hyrox.com/rulebook/)に「TUE FORM」の名前で置かれています。HYROX Japanのルールブックのページには規程の日本語版へのリンクがありますが、申請書へのリンクはありませんでした(2026年10月1日に取得したページ)。
出場前にすることを順に並べると、次のようになります。
- 使っている薬の成分名(一般名)、用量、使い方(吸入・飲み薬・注射など)を確かめます
- 主治医に、HYROXに出ること、大会の日程、禁止表に載る成分かどうかを確かめたいことを伝えます。申請書は、禁止されていない薬で治療できる場合に、禁止される薬が必要な理由の説明を求めています。薬を替えられないかもあわせて相談します
- 禁止表に載る薬を続ける場合は、TUEの申請書を用意します。申請書は7ページで、選手が欄1(本人の情報)・2(過去の申請)・3(遡及申請かどうか)・7を、医師が欄4(診断)・5(薬の詳細)・6(医師の宣言)を記入します
- 医師の欄には、薬の一般名、用量、投与経路、頻度、治療期間を書き、診断を裏付ける資料を添付します。読みにくい申請や不完全な申請は差し戻されます
申請の時期は、文書によって書き方が違います。ルールブックは「レースの28日前までに申請することができます」と書いています。「できます」という書き方で、これが締切なのか、28日前を過ぎた申請がどう扱われるのかは、文面からは分かりません。規程の第4.4.2条は、日数を示さずに「可能な限り速やかに」申請しなければならないと書いています。締切かどうかが分からない以上、医師に記入を頼む時間と差し戻される場合も考えて、出場を決めた時点で準備を始め、28日前までに出しておくほうが安全です。

申請書には、治療を始めたあとにさかのぼって申請する場合の欄もあります。救急や緊急の治療が必要だった場合や、国際競技連盟や各国のアンチ・ドーピング機関の管轄下にない下位レベルの選手が検査を受けた場合などが、選択肢として並んでいます。どの場合に認められるかは国際基準によるため、この記事では扱いません。
すでに自国のアンチ・ドーピング機関や国際競技連盟から、同じ物質についてTUEを得ている人もいます。その場合、国際基準の条件を満たしていれば、認めるかどうかはHYROX Worldが裁量で決めます。認めない場合は、理由を付けて速やかに通知するとされ、認めないという決定は最終的で、法的に争うことはできないとも書かれています。ほかの機関のTUEを持っている人も、HYROXに認められるかを大会の前に確かめておく必要があります。
申請の送り先のメールアドレスは、申請書にも規程にも書かれていませんでした。日本の大会に出る場合は、HYROX Japanの公式FAQの「お問い合わせ」欄に載っているカスタマーサービスのメールアドレス(info@hyroxjp.com、2026年10月1日時点)に、送り先を問い合わせる方法があります。
違反とされた場合の決まり
規程は、違反とされた場合の結果を2つに分けて定めています。
1つは、その大会の結果です。違反がHYROXのイベント中か、イベントに関連して起きた場合、HYROX Worldの決定で、その大会での個人の結果がすべて失格になり、ポイントや賞品を失うことがあります。レース中の反則による失格(ペナルティの記事で整理しています)とは別の決まりです。
もう1つは、資格停止です。禁止物質の検出・使用・所持の違反では、故意の違反とされる場合は最低2年・最長4年、それ以外の場合は最低1年・最長2年とされています。
禁止表で「乱用物質」に指定されている物質には、別の定めがあります(第10.2.4条)。この記事で扱った区分では、S8のTHCが乱用物質です。競技外に、競技力と関係なく使ったことを選手が立証できた場合、資格停止は最低3か月・最長1年です。承認された治療プログラムを修了した場合は、3か月を超えないとされています。
資格停止には減免の規定があります。検出された物質が汚染された製品に由来し、重大な過失がないと立証できた場合は、資格停止を伴わない戒告から最長2年の資格停止までの範囲で、過失の程度に応じて決まります。「レクリエーション競技者」と保護対象者による違反にも、同じ幅の規定があります。どちらも、乱用物質は対象から外れます。HYROXの一般の参加者がこの「レクリエーション競技者」に当たるかどうかは、この記事では確かめていません。
KEY TAKEAWAYS
- HYROXのルールブックは、すべてのレーサーがアンチ・ドーピング規定を守り検査に従うと書き、無作為の検査をいつでも行う権利を留保しています。薬を使っている人の出場を一律に禁じる決まりではありません
- 確かめるのは、薬の成分が禁止表に載るかどうかと、載る場合にTUEを申請しているかどうかです。規程の英語版は表紙に「ELITE DIVISION」とあり、一般の参加者にどこまで及ぶかは文面から言い切れません
- 喘息の吸入薬に含まれるベータ2作動薬は常時禁止ですが、サルブタモールなど4成分は、吸入の上限量の範囲なら例外です。吸入器を持ち込めることと、薬の成分が禁止表の例外に収まることは別です
- ステロイド薬のグルココルチコイドは、注射・経口・直腸での投与が競技中に禁止されます。吸入や塗り薬などは、認可された用量と効能の範囲なら禁止されません。アナボリックステロイドは別の区分で、常に禁止されています
- TUEについて、ルールブックは28日前までに申請できると書き、規程は日数を示さずに、可能な限り速やかに申請するよう求めています。28日前が締切かどうかは文面から分かりません。申請書は7ページで、医師が記入する欄があります
- 検出された物質は、意図していなくても本人の責任になります。薬の成分名を控えて、主治医か薬剤師に禁止表との関係を確かめてください
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