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ルール · 9 MIN READ

HYROXは身長が低いと不利? 身長で変わらない規格と、体格に合わせて調整できること

HYROX(ハイロックス)には、身長で分かれる部門も、身長によって重さ・距離・ウォールボールの的の高さが変わる決まりもありません。的の高さは投げる人の性別で決まります。背が低いと不利かどうかは、通常の部門のルールブックにも、HYROXの経験者11人を調べた研究にも示されていません。選手が自分で変えられるローイング・スキーエルゴの設定とジャンプの幅、身長が理由で規格が変わるアダプティブ部門の低身長クラスの数字を、公式ルールブック(2026/27シーズン)をもとにまとめました。

HYROXは身長が低いと不利? 身長で変わらない規格と、体格に合わせて調整できること

HYROX(ハイロックス)には、身長で分かれる部門も、身長を理由に重さ・距離・回数・ウォールボールの的の高さを変える決まりもありません。シングルス(日本語版・英語版)・ダブルス・リレーの公式ルールブック(2026/27シーズン)を「身長」「height」「stature」などの語で検索しても、身長による部門分け・出場条件・補正の記載は見つかりませんでした。ウォールボールの的の高さは女性2.70m・男性3.00mで、投げる人の性別で決まります。

背が低いと不利かどうかは、通常の部門のルールブックにも、HYROXの経験者11人を調べた研究(2025年)にも示されていません。この研究は参加者の身長を測っていますが、完走タイムとの関係を調べた表に身長は入っていません。同じ表で完走タイムと関係が見られたのは最大酸素摂取量・持久力トレーニングの量・体脂肪率で、体重とBMIには関係が見られませんでした。

体格や好みに合わせて選手が自分で変えられるのは、ローイングのフットプレート(足を乗せる板)の位置と抵抗の強さ(ダンパー)、スキーエルゴのダンパー、バーピーブロードジャンプで1回に跳ぶ距離です。身長が理由で別の規格になるのは、骨の疾患などで立ったときの身長が低い人が正式なクラス分けを受けて出る、アダプティブ部門の「低身長」クラスだけです。

この記事は、HYROXの公式ルールブック(シングルス・ダブルス・リレー・アダプティブ、2026/27シーズン・10月12日確認)、ミュンヘン連邦軍大学の研究(2025年)、HYROXの公式エルゴを作るConcept2の案内と日本の総代理店のFAQをもとにしています。

01

HYROXには身長で分かれる部門や出場条件が無い

ルールブック4冊の全文を検索して、身長に関わる語として出てきたのは、ウォールボールの表の見出し「TARGET HEIGHT」(的の高さ)と、姿勢を指す「standing tall」(まっすぐ立った姿勢)の2つだけでした。身長で部門を分ける、身長によって出場を制限する、身長に応じて重さや距離を変える、といった記載はありません。シングルス日本語版では「身長」という語は1度も出てきません。

出場の条件として決まっているのは年齢です。シングルス・ダブルス・リレーのどれも、大会当日に16歳以上であることが必要です。身長の条件はありません。年齢以外の条件(妊娠中・ケガ・持病があるとき)は参加条件の記事にまとめています。

種目ごとに、規格が何で決まり、選手が自分で何を変えられるかを並べると次のとおりです。重さはシングルスのオープンの数字で、プロは別の重さになります。

種目

距離・回数

部門・性別で変わるもの

身長による違い

選手が自分で変えられること

ラン

1km×8回(合計8km)

なし

なし

なし

スキーエルゴ

1,000m

なし

なし

ダンパー(初期値6・何度でも変えられる)

スレッドプッシュ

50m(12.5m×4)

重さ(女子102kg・男子152kg、スレッド込み)

なし

なし

スレッドプル

50m(12.5m×4)

重さ(女子78kg・男子103kg、スレッド込み)

なし

なし

バーピーブロードジャンプ

80m

なし

なし

1回に跳ぶ距離

ローイング

1,000m

なし

なし

フットプレートの位置(種目を始める前)・ダンパー(初期値6)

ファーマーズキャリー

200m

ケトルベルの重さ(女子16kg・男子24kgを2個)

なし

なし

サンドバッグランジ

100m

サンドバッグの重さ(女子10kg・男子20kg)

なし

なし

ウォールボール

100回

ボールの重さ(女子4kg・男子6kg)、的の高さ(投げる人の性別)

なし

なし

HYROXの種目の規格を決めているものを4つに分けた図。部門で決まるのは、スレッドプッシュ・スレッドプルの重さ、ファーマーズキャリーのケトルベルの重さ、サンドバッグランジの重さ、ウォールボールのボールの重さ。投げる人の性別で決まるのは、ウォールボールの的の高さ(女性2.70m・男性3.00m)で、ミックスでは2人で違う。どの部門も同じなのは、ラン1km×8回、スキーエルゴ・ローイング1,000m、スレッドプッシュ・スレッドプル50m、バーピーブロードジャンプ80m、ファーマーズキャリー200m、サンドバッグランジ100m、ウォールボール100回。選手が自分で変えられるのは、ローイングのフットプレートの位置(種目を始める前)、ローイング・スキーエルゴのダンパー(初期値6)、バーピーブロードジャンプで1回に跳ぶ距離。身長によって変わる規格は見つからなかった
出典:HYROX公式ルールブック(シングルス日本語版・英語版、ダブルス、リレー、2026/27シーズン)

プロ・ダブルス・リレーを含めた全部門の重さは重量一覧に、8種目の内容と順番は8種目の記事にまとめています。

02

ウォールボールの的の高さは性別で決まり、身長では変わらない

ウォールボールは、壁の高い位置にある的へボールを投げ上げる種目です。シングルスのルールブックは的の高さを、女子(WOMEN)と女子プロ(WOMEN PRO)が2.70m、男子(MEN)と男子プロ(MEN PRO)が3.00mと、性別の区分で定めています。投げる人の身長に応じて的の高さを変える記載はありません。

ダブルスでは、的の高さはペアの部門ではなく投げる本人の性別で決まります。リレーのルールブックも、女性のレーサーは女性の的に、男性のレーサーは男性の的に当てると定めています。部門ごとの的の高さとボールの重さは次のとおりです。

部門

的の高さ

ボールの重さ

シングルス 女子・女子プロ

2.70m

女子4kg・女子プロ6kg

シングルス 男子・男子プロ

3.00m

男子6kg・男子プロ9kg

ダブルス 女子・女子プロ

2.70m

女子4kg・女子プロ6kg

ダブルス 男子・男子プロ

3.00m

男子6kg・男子プロ9kg

ダブルス ミックス

女性が投げるときは2.70m、男性が投げるときは3.00m

2人とも6kg

リレー 女子

2.70m

4kg

リレー 男子

3.00m

6kg

リレー ミックス

投げる人の性別に従う(女性2.70m・男性3.00m)

(ルールブックの重さの表に列が無い)

ダブルスとリレーのルールブックにある的の高さの表は、女子2.70m・男子3.00mの2行だけで、ミックスの行はありません。表のミックスの欄は、女性は女性の的に、男性は男性の的に当てるという規定から読み取った高さです。

動作の基準も、身長にかかわらず全員に同じものが当てはまります。

  • スタートと毎回の始まりは、股関節と膝を伸ばしてまっすぐ立った姿勢
  • しゃがんだときに、股関節が膝より下まで下がる(太ももが床と平行より下)
  • 両手で投げ、自分の的のストライクゾーンに当てる

身長に応じてこの基準を緩める記載はありません。投げ方のコツや判定の細かい基準はウォールボールのページで説明しています。

03

選手が自分で調整できるのはローイング・スキーエルゴの設定とジャンプの幅

ルールブックで選手が自分で変えてよいと書かれているのは、次の3つの種目の設定です。ローイングとスキーエルゴのマシンを作っているConcept2は、自社サイトでHYROXの公式エルゴだと案内しています。

ローイング:フットプレートの位置とダンパー

ローイングのフットプレートは、全部門でポジション4にあらかじめ合わせてありますが、選手は種目を始める前に好みの位置に変えられます。ダンパー(抵抗の強さ)は6に合わせてあり、選手の判断で何度でも変えられます。ダブルスでは、ダンパーを変えられるのはそのとき漕いでいる選手だけで、休んでいる選手が相手の代わりにダンパーやフットストラップを調整することは認められていません。

足を固定する位置の目安について、Concept2は次のように案内しています。

  • かかとをフットストレッチャー(足を乗せる板)に合わせ、ストラップ(足を固定するベルト)が足の指の付け根(母指球のあたり)を横切る位置が基本
  • 素足で漕ぐなら少し高め、体の柔軟性が低い・お腹まわりに肉が付いている場合は低めにする
  • 低くしすぎて、太ももの裏(ハムストリングス)がシートに当たって不快になる位置は避ける

ローイングの漕ぎ方はローイングのページにあります。

スキーエルゴ:ダンパー

スキーエルゴのダンパーも全部門で6に合わせてあり、選手が何度でも変えられます。

Concept2の日本の総代理店は、スキーエルゴを快適に使える身長を150cmから195.5cmとしています。使っていないときのハンドルは190cmの高さにあり、手が届かない場合は足台などを使ってハンドルを取るよう案内しています。ハンドルを下へ引ける限界は床から約40cmです。これはConcept2の日本の総代理店がスキーエルゴ本体について案内している数字で、大会の会場での設置の高さは、ルールブックに書かれていません。種目の動き方はスキーエルゴのページで説明しています。

バーピーブロードジャンプ:1回に跳ぶ距離

バーピーブロードジャンプの合計は80mで、1回ごとにどれだけ跳ぶかは選手が自分で決めます。1回の距離の下限・上限を定めた記載は見当たりません。跳ぶ距離が短ければ、80mに届くまでの回数が増えます。

守る必要があるのは動作の決まりです。両足で同時に踏み切って同時に着地し、左右のつま先のずれは踏み切り・着地とも5cmまで、2回目からは手を前足のつま先から30cm以内に置きます。詳しくはバーピーブロードジャンプのページにまとめています。

04

11人を調べた研究でも身長と成績の関係は分析されていない

HYROXの成績と体の特徴の関係を調べた研究に、ドイツのミュンヘン連邦軍大学のグループが2025年に学術誌「Frontiers in Physiology」で発表したものがあります。HYROXの経験がある11人(男性8人・女性3人)が模擬レースを行い、完走タイムと、事前に測った体の特徴やトレーニング量との関係を調べています。

この研究は参加者の身長を身長計で測っていますが、完走タイムとの関係を調べた表に身長は含まれていません。表にある項目と結果は次のとおりです(数字は完走タイムとの相関係数で、−1から1の間。0に近いほど関係が弱い)。

項目

完走タイムとの相関係数

結果

最大酸素摂取量

−0.71

関係あり(高い人ほどタイムが短い)

持久力トレーニングの量

−0.68

関係あり(多い人ほどタイムが短い)

体脂肪率

0.67

関係あり(高い人ほどタイムが長い)

体重

0.02

関係は見られない

BMI

−0.07

関係は見られない

身長

—

表に含まれていない

体重(p=0.96)とBMI(p=0.83)は、完走タイムとの関係が統計的に確かめられませんでした。表にはこのほか、筋肉量の割合、握力、筋力トレーニングの量も入っています。

対象は11人と少なく、研究は1本だけです。この研究からは、背が低いと不利とも、身長は関係ないとも言えません。部門ごとの重さからみた筋力の目安は必要な筋力の記事にまとめています。

05

身長が理由で規格が変わるのはアダプティブ部門の低身長クラスだけ

HYROXには、恒久的な機能障がいのある人が出る「アダプティブ」部門があり、13のクラスの1つが「低身長」です。アダプティブのルールブックは低身長クラスを、骨の疾患(例:軟骨無形成症などの骨系統疾患)によって立ったときの身長が低い人のクラスとしています。器具の標準の高さやウォールボールの的との関係で手足の長さが力学的に不利になることを、このクラスを設ける理由に挙げています。

出場するには、このクラスに正式にクラス分けされていなければなりません。病気などの理由がなく背が低いだけでは対象になりません。通常の部門と同じく、出場できるのは大会当日に16歳以上の人です。

低身長クラスの規格を、シングルスのオープンと並べると次のとおりです(重さは女性/男性)。

種目

シングルスのオープン

アダプティブ 低身長クラス

ラン

1kmを8回

各区間1周

スキーエルゴ

1,000m

500m

スレッドプッシュ

12.5m×4・102kg/152kg

12.5m×2・77kg/102kg

スレッドプル

12.5m×4・78kg/103kg

12.5m×2・53kg/78kg

バーピーブロードジャンプ

80m

40m

ローイング

1,000m

500m

ファーマーズキャリー

200m・16kg/24kgを2個

100m・12kg/16kgを2個

サンドバッグランジ

100m・10kg/20kg

50m・5kg/10kg

ウォールボール

100回・4kg/6kg・的2.70m/3.00m

50回・2kg/4kg・的2.00m/2.30m

スレッドの重さはスレッド込みです。ウォールボールの的は、女性・男性どちらも通常の部門より70cm低くなります。

HYROXのウォールボールの的の高さを、通常の部門とアダプティブ部門の低身長クラスで比べた横棒グラフ。通常の部門(100回)は女性が投げる的が270cm、男性が投げる的が300cm。低身長クラス(50回)は女性が投げる的が200cm、男性が投げる的が230cm。ボールの重さは通常の部門のオープンが女性4kg・男性6kg、低身長クラスが女性2kg・男性4kg
出典:HYROX公式ルールブック(シングルス・アダプティブ日本語版、2026/27シーズン)

13のクラスの全体、申し込みの手順、日本の大会での開催状況はアダプティブ部門の記事にまとめています。

06

ペアで身長差があっても規格は変わらない(ダブルス・ミックスダブルス)

ダブルスで2人の身長が違っても、規格は変わりません。ミックスダブルスでは、ボールは2人とも6kgで、的の高さは女性が投げるときは2.70m、男性が投げるときは3.00mです。

どちらがどれだけ担当するかは2人で決められ、分け方の考え方はダブルスの分担の記事にまとめています。

07

KEY TAKEAWAYS

  • HYROXには、身長で分かれる部門も、身長の出場条件もありません。ルールブック(2026/27シーズン)に、身長に応じて重さ・距離・回数を変える記載は見つかりませんでした
  • ウォールボールの的の高さは女性2.70m・男性3.00mで、投げる人の性別で決まります。ミックスダブルスでは2人で的の高さが違います
  • 背が低いと不利かどうかは、通常の部門のルールブックにも、HYROXの経験者11人を調べた研究(2025年)にも示されていません。この研究は、身長と完走タイムの関係を分析していません
  • 同じ研究で、体重とBMIは完走タイムと関係が見られず、関係が見られたのは最大酸素摂取量・持久力トレーニングの量・体脂肪率でした
  • 選手が自分で変えられるのは、ローイングのフットプレートの位置(種目を始める前)、ローイングとスキーエルゴのダンパー(初期値6)、バーピーブロードジャンプで1回に跳ぶ距離です
  • 身長が理由で規格が変わるのは、骨の疾患などで立ったときの身長が低く、正式にクラス分けされた人が出るアダプティブ部門の低身長クラスだけです。ウォールボールは50回・的2.00m/2.30mになります
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