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トレーニング · 17 MIN READ

HYROXの練習期の食事|炭水化物・たんぱく質・水分の1日の目安を体重別に計算する

HYROX(ハイロックス)に向けて練習している時期に、何をどれくらい食べればよいかを、国際スポーツ栄養学会(ISSN)の総説と立場表明の数字でまとめました。炭水化物は練習量に応じて体重1kgあたり1日3〜5g/5〜8g、たんぱく質は1.4〜2.0gを1回20〜40gずつ3〜4時間おきに、が目安です。体重50〜80kgの早見表、練習量から自分の行を選ぶ方法、農林水産省の「食事バランスガイド」でごはんや主菜の数に直した量、練習の前後に食べるタイミング、水分のとり方、食べる量が足りないときに起こることを載せています。

HYROXの練習期の食事|炭水化物・たんぱく質・水分の1日の目安を体重別に計算する

HYROX(ハイロックス)に向けて練習している時期の食事は、体重1kgあたりの量で目安を出せます。国際スポーツ栄養学会(ISSN)の総説と立場表明が示す1日の量は、次のとおりです。

  • 炭水化物: 運動が1日30〜40分・週3回ほどの人で体重1kgあたり3〜5g、強い運動を1日2〜3時間・週5〜6回行う人で5〜8g、強い運動を1日3〜6時間・週5〜6日行う人で8〜10g
  • たんぱく質: 体重1kgあたり1.4〜2.0g(運動している人のほとんどは、この量で十分とされています)。1回20〜40gを、3〜4時間おきに分けてとる
  • 脂質: 1日にとるエネルギーの約30%
  • 水分: 練習の前後に体重を量り、体重の2%以上が減らないように飲む

体重70kgの人に当てはめると、炭水化物は1日210〜350g(強い運動を1日2〜3時間・週5〜6回行う人は350〜560g、1日3〜6時間行う人は560〜700g)、たんぱく質は1日98〜140gです。

この記事では、体重50〜80kgの早見表、練習量から表の行を選ぶ方法、ごはんや主菜の数に直した量、練習の前後に食べるタイミング、水分のとり方、食べる量が足りないときに起こることを順にまとめます。大会の前日・当日・レース中の食事は、HYROXの補給とHYROX前日にやることで扱っています。

根拠にしたのは、ISSNの総説(2018年)とたんぱく質・栄養タイミングの立場表明(2017年)、日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)が公開しているアスリート向けハンドブック、厚生労働省の『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』、農林水産省の「食事バランスガイド」です。HYROXに向けた食事については、HYROX向けのトレーニングプログラムを販売するCentrの栄養士の解説も参照しました。Centrの解説は企業の見解で、HYROX公式の規定ではありません。ISSNの数字は健康で運動をしている成人を対象にしたもので、持病のある人への個別の指示にはなりません。10月6日時点で確認しています。

01

練習量と体重から1日の炭水化物とたんぱく質の量を計算する

ISSNの総説は、練習量を3つに分けて、1日にとる量を体重1kgあたりで示しています。

練習量(総説が挙げる例)

エネルギー

炭水化物

たんぱく質

一般的な運動習慣(1日30〜40分の運動を週3回)

約25〜35kcal

3〜5g

0.8〜1.2g

中程度の練習量(強い運動を1日2〜3時間、週5〜6回)

40〜70kcalに近づくことがある

5〜8g

1.2〜2.0g

高い練習量(強い運動を1日3〜6時間、1〜2回に分けて週5〜6日)

40〜70kcalに近づくことがある

8〜10g

1.7〜2.2g

数字はどれも、体重1kgあたり・1日あたりの量です。表の読み方を3点補足します。

  • エネルギーの40〜70kcalは、中程度の練習量と高い練習量をまとめて示した数字です(体重50〜100kgの選手で1日2,000〜7,000kcal)
  • 一般的な運動習慣の人は、ふつうの食事(1日1,800〜2,400kcal。体重50〜80kgの人で体重1kgあたり約25〜35kcal)で必要な量をまかなえると書かれています。運動で使うエネルギーが1回200〜400kcalほどで、大きくないためです
  • 高い練習量の炭水化物は、原文の表記が「1日8〜10g」ですが、体重1kgあたりの量です(体重50〜150kgの選手で1日400〜1,500gと併記されています)

たんぱく質については、ISSNのたんぱく質の立場表明が、運動している人のほとんどは体重1kgあたり1日1.4〜2.0gで十分としています。記事の冒頭と下の早見表では、練習量で分けずにこの数字を使いました。上の表の1行目の0.8〜1.2gは、ふつうの食事(たんぱく質がエネルギーの15〜20%)に含まれる量として総説が挙げた数字です。総説は、一般的な運動習慣の人についても、最近の研究ではたんぱく質の必要量が推奨量(RDA)より多い可能性があり、1.2〜2.0gの範囲を考えるべきだとする報告を紹介しています。

自分の量は、次の順で計算します。

  • 体重を量る
  • 上の表から、自分の練習量に近い行を選ぶ(選び方は次の節にまとめています)
  • 体重に、その行の数字を掛ける
  • 出てきた量を、ごはんや主菜の数に置き換える
  • 体重が保てているかを確かめて、量を調整する

体重ごとに掛け算した結果が次の表です。

体重

炭水化物(3〜5gの行)

炭水化物(5〜8gの行)

炭水化物(8〜10gの行)

たんぱく質(1.4〜2.0g)

50kg

150〜250g

250〜400g

400〜500g

70〜100g

60kg

180〜300g

300〜480g

480〜600g

84〜120g

70kg

210〜350g

350〜560g

560〜700g

98〜140g

80kg

240〜400g

400〜640g

640〜800g

112〜160g

表の数字は、体重に体重1kgあたりの量を掛けて編集部が計算したものです。

体重70kgの人の1日の炭水化物の目安を、練習量ごと(運動が1日30〜40分・週3回、強い運動が1日2〜3時間・週5〜6回、強い運動が1日3〜6時間・週5〜6日)とCentrの栄養士が示す範囲で比べた横棒の図
出典:国際スポーツ栄養学会(ISSN)の総説(2018年)、Centrの栄養士の解説をもとに編集部が計算(2026年10月6日確認)
02

HYROXの練習量に近い行の選び方

ISSNの資料はHYROXを名指ししていないので、HYROXの練習がどの行にあたるかを決めた出典はありません。この節では、表の条件に書かれた運動の時間を手がかりに、編集部が練習の時間を比べます。1週間の合計に直すと、一般的な運動習慣の行は週90〜120分、中程度の練習量の行は週10〜18時間です。

HYROXに向けた練習の量は、海外のトレーニングガイドに目安があります。Gymsharkは、初心者は週3〜4日で十分とし、1回の練習については、回復なしに毎日詰め込むより、集中した45〜60分のほうがずっと効果があるとしています。45〜60分は、初心者に限った数字ではありません。週3〜4日・1回45〜60分で練習した場合を編集部が計算すると、1週間の合計は週135〜240分です。RitFitやSTRIDE Fitnessのプランは、これより多い週5回前後です。RitFitは、初心者向けの12週間プランの最初の4週間について、1回を45〜60分に収め、1週間の合計を4〜5時間にするよう書いています。

どちらの練習時間も、一般的な運動習慣の行(週90〜120分)より多く、中程度の練習量の行(週10〜18時間)より少ない量です。時間だけで比べると、初心者向けの目安どおりの練習は3〜5gの行に近く、練習の回数と時間が増えるほど5〜8gの行に近づきます。これは編集部が時間を比べた結果で、出典がHYROXの練習をどちらかの行に当てはめているわけではありません。HYROXの練習がISSNの言う「強い運動」にあたるかも、出典からは判断できません。

HYROXに向けた数字としては、Centrの栄養士が、HYROXの選手の炭水化物を体重1kgあたり1日4〜7gとしています。同社のプログラムのうち「Accelerator」に取り組む人は多い側、HYROXを始めたばかりで「Starter」に取り組む人はそこまで要らない、という説明です。4〜7gはISSNの2つの行にまたがる範囲で、体重70kgなら1日280〜490gになります。企業の栄養士の見解なので、ISSNの数字と同じ重みでは扱えません。

量が合っているかは、体重で確かめます。ISSNの総説は、練習で増えた必要量を埋め合わせるだけのエネルギーをとれているか、体重を保てているかを、専門家が個別に確かめることが重要だとしています。厚生労働省のガイドも、体重や体組成が変わっていなければ、とっているエネルギーと使っているエネルギーは等しいと考えられると説明しています。体重を減らしたい場合の考え方は、HYROXの練習で痩せる?にまとめています。

練習の回数や時間の決め方は、HYROX初出場のための練習の組み立て、週2回で組む場合、12週間の練習メニューを参照してください。

03

炭水化物の役割と主食の数に直した量

HPSCのハンドブックは、運動するときの筋肉の主なエネルギー源は、グリコーゲンという形で筋肉に蓄えられた炭水化物だと説明しています。体内に蓄えられる量には限りがあります。食事の炭水化物が足りなかったり、激しい運動で一気に使ったりすると、低血糖の状態になり、持久的なパフォーマンスが落ち、頭痛やめまいが起こる危険があるとしています。

HYROXは、1kmのランのあとに1種目を行い、これを8回繰り返すレースです。公式サイトは、レースには平均で約90分かかると案内しています。合計8kmのランを含むので、持久系の運動についての記述が参考になります。ISSNのたんぱく質の立場表明は、持久系の運動をする人について、まず炭水化物を十分にとることに力を入れるよう書いています。

何からとるかについて、ISSNの総説は、炭水化物の大部分を全粒穀物・野菜・果物などからとるのが望ましいとしています。精製された糖やでんぷん、スポーツ栄養の製品のように胃から早く出ていくものは、グリコーゲンを急いで戻したい場面のためにとっておく、という考え方です。

グラムで出した量は、農林水産省の「食事バランスガイド」の数え方を使うと、料理の数に直せます。このガイドは、ごはん・パン・めんなどの主食を「1つ」「2つ」と数え、1つ分を、主材料に由来する炭水化物約40gと決めています。

料理

主食の数

炭水化物の目安

ごはん(小盛り)、おにぎり1個、食パン1枚、ロールパン2個

1つ

約40g

ごはん(普通盛り)

1.5つ

約60g

ごはん(大盛り)、うどん・そば・ラーメン、スパゲッティ

2つ

約80g

主食の数は農林水産省の早見表によります。炭水化物の目安は、1つ分の約40gに主食の数を掛けて編集部が計算した値で、ごはん・パン・めんそのものに由来する分だけを数えています。

体重70kgの人が、体重1kgあたり5gにあたる350gをとる場合で考えます。3食ともごはんを普通盛り1杯にすると、主食からとれる炭水化物は約180gです。350gを主食だけでとるなら約9つ分で、ごはんの普通盛りなら約6杯にあたります。

野菜や果物など、主食以外の食品にも炭水化物は含まれるので、全部を主食でとる必要はありません。それでも350gは、3食の主食からとれる約180gのおよそ2倍にあたります。食事バランスガイドの基本の形(2,200±200kcal)は、体を動かす量が少ない成人男性と、ふつう以上の成人女性の1日分を想定しています。強い運動をしている人は、これより多くのエネルギーが要るので、量を調整するよう案内されています。

3食でとりきれないときの方法は、HPSCのハンドブックにあります。おにぎり、パン、和菓子、スポーツフーズのように、脂質が少なくて炭水化物の多い食品を、食事のあいだに足すやり方です。

ISSNの栄養タイミングの立場表明には、体重1kgあたり1日8〜12gという、さらに多い数字も出てきます。これは、筋肉と肝臓のグリコーゲンの蓄えを最大にするための量で、蓄えが最も減るのは量の多い運動のときとされています。先の表では、強い運動を1日3〜6時間行う人の8〜10gに近い数字です。大会の前に炭水化物を増やす方法は、HYROXの補給にまとめています。

04

たんぱく質は1回20〜40gを3〜4時間おきに分ける

ISSNのたんぱく質の立場表明は、筋肉を付ける・保つには、体重1kgあたり1日1.4〜2.0gとれば、運動している人のほとんどにとって十分だとしています。

1回の量と間隔も示されています。良質なたんぱく質を1回20〜40g(体重1kgあたり0.25〜0.40g)、3〜4時間おきに、1日の中でほぼ均等に分けるとり方です。体重70kgの人なら、体重から計算した1回の量は17.5〜28gです。1日の合計の98〜140gを4回に分けると、1回は24.5〜35gで、20〜40gの範囲に収まります(4回は、3〜4時間おきの例として置いた回数です)。

1日のたんぱく質を朝・昼・午後・夜の4回に分け、1回20〜40gを3〜4時間おきにとる目安と、体重70kgの人が1日98〜140gを4回に分けた場合の1回24.5〜35gを並べた時間軸の図
出典:国際スポーツ栄養学会(ISSN)のたんぱく質・栄養タイミングの立場表明(2017年)をもとに編集部が計算(2026年10月6日確認)

とる時間は、練習の前でも後でもかまいません。立場表明は、運動の前でも後でも利益があり、どの時間帯がよいかは個人の消化のしやすさによるとしています。運動による筋肉づくりの反応は少なくとも24時間続きますが、運動から時間が空くほど弱まります。

何からとるかについては、必須アミノ酸をすべて含む食品を中心に考えるよう書かれています。ISSNの総説は、脂質が少なく良質なたんぱく質の食品として、皮なしの鶏肉、魚、卵白、脂身の少ない牛肉、脱脂乳を挙げています。プロテインなどのサプリメントは成績を上げるための絶対条件ではなく、1日のたんぱく質の大部分は食事の中でとるのが望ましい、という立場です。食事だけで必要な量をとることは可能で、サプリメントは練習量の多い人が量と質を確保する手段の1つとされています。HYROXの公式栄養パートナーの商品は、HYROXとマイプロテインで紹介しています。

料理の数に直すときは、ここでも食事バランスガイドが使えます。肉・魚・卵・大豆製品の料理(主菜)は、1つ分が主材料に由来するたんぱく質約6gです。

料理

主菜の数

たんぱく質の目安

目玉焼き・卵焼き(卵1個分)、納豆1パック、冷やっこ

1つ

約6g

焼き魚・煮魚、さしみ(6切れくらい)、焼き鳥2本

2つ

約12g

からあげ3個、しょうが焼き3枚、とんかつ、ハンバーグ

3つ

約18g

たんぱく質の目安は、1つ分の約6gに主菜の数を掛けて編集部が計算した値です。数えているのは肉・魚・卵・大豆製品に由来する分だけで、ごはんやパン、牛乳・乳製品に含まれるたんぱく質は入っていません。実際の1食のたんぱく質は、この数字より多くなります。

表を使うと、1回20gは、肉料理1人前(約18g)に近い量だと分かります。魚料理1人前に卵1個分の料理か納豆1パックを足すと、主菜の分は約18gです。

たんぱく質については、次の4点にも注意が要ります。

  • 多いほどよいわけではありません。厚生労働省のガイドは、たんぱく質をとる量を増やすほど筋肉が比例して増えるわけではないので、体を動かす量に応じてとることが重要だとしています
  • 腎臓の働きが落ちている人は、たんぱく質の制限が行われます。高血圧や糖尿病のある人は、気づかないうちに腎臓の働きが落ちている可能性があるため、かかりつけ医への相談が必要とされています
  • 体重1kgあたり2.3〜3.1gという多い数字は、筋トレをしている人が食事のエネルギーを減らしている期間に、筋肉などの除脂肪量を保つ場面のものです。ふだんの練習期の目安とは別の話です
  • 肉や魚を食べない人について、Centrの栄養士は、豆腐・レンズ豆・テンペ・キヌアなどの植物性の食品とプロテインで目標を満たせるとし、鉄・ビタミンB12・オメガ3が足りているかも確かめるよう書いています

HPSCのハンドブックにも、たんぱく質の数字があります。強い運動で筋肉が傷ついたあとの回復に必要な量として、1日に体重1kgあたり1.2〜2.0g、体重1kgあたり0.3gを約3〜5時間おき、というものです。回復の場面についての数字で、ISSNの練習期の目安と大きくは違いません。レース後の回復はHYROXのあとの筋肉痛と回復にまとめています。

05

脂質の割合と1日の食事の回数

脂質について、ISSNの総説は、1日にとるエネルギーの約30%を中心に考えるよう勧めています。運動選手への推奨は、運動をしていない人への推奨と同じか、少し多い程度です。練習量が多い期間は、最大50%までなら安全にとれるともしています。一般的な運動習慣の人のふつうの食事では、脂質は25〜35%(体重1kgあたり1日0.5〜1.5g)です。

食事の回数は、1日4〜6回の食事と、その間の補食を勧めるスポーツ栄養士が多いと総説は書いています。エネルギーを足りなくしないための実務上の工夫で、4〜6回でなければならないという研究結果ではありません。

回数を増やす理由も説明されています。強い練習をすると食欲が落ちたり、空腹の感じ方が変わったりして、食べたいと感じない選手が多いとされています。食べてから数時間は、満腹感や胃腸の不快感で運動したがらない選手もいます。そのため総説は、食事の時間を練習に合わせて計画し、食間に食べられるものを1日を通して用意しておくよう勧めています。

06

練習の前後に食べるタイミング

練習の前後に何をいつとるかを、出典ごとに並べます。

タイミング

とるもの

出典

練習の前(食事と補食の時間)

食事は練習の約4〜6時間前にとる。30〜60分前に、炭水化物とたんぱく質の軽い補食(例: 炭水化物50gとたんぱく質5〜10g)を足す

ISSNの総説

練習の前(食事の例)

朝の練習なら朝食、午後や夜の練習なら昼食か夕食を先にとる。長い練習の前は、開始の10〜30分前に炭水化物の多い軽食を足す

Centrの栄養士

練習中(最大酸素摂取量の70%を超える強さの運動が60分を超えるとき)

炭水化物を1時間あたり約30〜60g。6〜8%の炭水化物・電解質飲料を10〜15分おきに

ISSNの栄養タイミングの立場表明

練習の直後から2時間後まで

良質なたんぱく質(1回の量の目安は、前の節の20〜40g)

ISSNの栄養タイミングの立場表明

次の練習まで4時間未満のとき

最初の4時間は、炭水化物を体重1kgあたり1時間に1.2g

ISSNの栄養タイミングの立場表明

次の練習まで8時間以上あるとき

主食・主菜・副菜・牛乳や乳製品・果物をそろえた食事。足りなければ補食

HPSC

練習の前について、ISSNの総説は、炭水化物が消化されてグリコーゲンとして筋肉と肝臓に蓄えられるまでに約4時間かかるため、運動の前の食事は約4〜6時間前にとるよう書いています。午後に練習するなら、朝食が大事になります。運動の30〜60分前に炭水化物とたんぱく質の軽い補食(例として炭水化物50gとたんぱく質5〜10g)をとると、強い運動の終盤に使える炭水化物が増えるという研究も紹介しています。

体重あたりの数字は、HPSCのハンドブックにあります。試合やレースの前の目安として、開始の1〜4時間前に炭水化物を体重1kgあたり1〜4gとるというものです。体重70kgなら70〜280gです。2時間以上前はおにぎり・サンドイッチ・果物など、1時間前はスポーツフーズ(ドリンクやゼリー)などが例に挙がっています。試合やレースに向けた数字で、ふだんの練習の前の量として示されたものではありません。大会当日の食事はHYROXの補給にまとめています。

Centrの栄養士は、練習の前の食事の例として、朝の練習の前は作り置きできる朝食(オーバーナイトオーツなど)、午後や夜の練習の前は米を使った丼を挙げています。練習のあとは30〜60分以内に補給するよう勧め、たんぱく質は1食25〜30gを目安にしています。企業の栄養士による例で、同社の食事プランを前提にした説明です。

練習中の炭水化物は、強い運動が長く続くときの目安です。ISSNの栄養タイミングの立場表明(2017年)は、最大酸素摂取量(運動中に体が取り込める酸素の量の上限)の70%を超える強さの運動が60分を超える場合を条件にし、70分を超える運動では特に、としています。ISSNの総説(2018年)は、同じ強さの運動が90分を超える場合としていて、文書によって時間の線引きが違います。

ISSNの栄養タイミングの立場表明は、運動の直後から2時間後までに良質なたんぱく質をとると、筋肉のたんぱく質の合成が強く高まるとしています。表に添えた20〜40gは、3〜4時間おきにとるときの1回の量で、練習の直後に限った数字ではありません。運動の前の食事の量と時間によって、運動のあとにたんぱく質がどの程度必要かは変わりうる、とも書いています。

炭水化物を急いでとる必要があるのは、次の練習まで4時間未満しかないときです。このときは、運動後の最初の4時間、体重1kgあたり1時間に1.2gをとります。体重70kgなら1時間に84gです。血糖を上げやすい炭水化物が向くとされています。1日に2回練習して、あいだが4時間未満の日が当てはまります。次の練習が翌日なら、急いでとる必要はありません。

HPSCのハンドブックは、運動の直後に体重1kgあたり0.7gの炭水化物を、吸収の速いもの(スポーツドリンクやゼリー、バナナなど)でとる目安も示しています。

07

水分は練習の前後の体重で確かめる

ISSNの総説は、体重の2%以上を汗で失うと、運動の能力が大きく落ちることがあるとしています。体重70kgなら1.4kgです。運動中にかく汗は平均で1時間あたり0.5〜2.0Lと報告されていて、60〜90分の運動でもこの影響が出うる、と書いています。

総説が勧めているのは、次の3つです。

  • 運動をする時間に関係なく、1日を通して体重を保てるだけの水分をとる
  • 喉の渇きに頼らない。かなりの水分を失うまで、喉は渇かないため
  • 練習の前後に体重を量り、減った分を補う

量の目安は、HPSCのハンドブックが体重あたりで示しています。

タイミング

量の目安

運動の前

4時間前から、体重1kgあたり5〜7mLを少しずつ(体重70kgで350〜490mL)

運動中

汗の量を大きく超えて飲まず、体重の2%以上が減らないようにする

運動のあと

減った体重の1.25〜1.50倍(体重が1kg減っていれば1.25〜1.50L)

飲み物の中身(スポーツドリンクの糖質と電解質の濃さ)と、レース中の給水のルールは、HYROXの補給に書いています。

08

食べる量が足りないときに起こること

ISSNの総説は、エネルギーの足りない食事のまま練習を続けたときに起こりうることを挙げています。

  • 筋肉量・筋力・骨密度の低下
  • 病気やけがをしやすくなる
  • 免疫・ホルモン・生殖機能の乱れ
  • 睡眠の質の低下、回復の遅れ、安静時の心拍数の上昇
  • 練習への無気力、オーバートレーニングの増加

女性の選手は、エネルギーが不足するリスクが特に高いとされています。体が使えるエネルギーが少ない状態は、月経が減ったり止まったりすることと結びつくと総説は書いています。月経の変化に気づいたら、医療機関に相談してください。

HYROXに向けた解説でも、食べる量を大きく減らすやり方は勧められていません。Centrの栄養士は、同社の食事の目標のうち減量向けの「Lose Fat」だけはHYROXの練習に向かないとしています。集中的な練習には、この減量プランでとれる量より多くのエネルギーが要る、という理由です。断食についても、長く食べない時間があると疲労が増え、練習の質が落ち、進歩が遅れるとして、勧めていません。

09

細かい計画は管理栄養士に相談する

この記事の数字は、健康で運動をしている成人に向けた一般的な目安です。持病がある人、薬を飲んでいる人、妊娠中の人は、食事を変える前に医師に相談してください。

米国栄養士会・カナダ栄養士会・米国スポーツ医学会(ACSM)の共同の立場表明は、競技の成績と回復は、よく考えた栄養の取り方で高まるとしたうえで、個別の栄養計画については、管理栄養士に紹介するよう求めています。タイムを縮めたい人や、体重を変えながら練習したい人は、スポーツ栄養を扱う管理栄養士に、練習の内容と体重の記録を見せて相談する方法があります。

10

KEY TAKEAWAYS

  • HYROXの練習期の食事は、体重1kgあたりで計算します。ISSNの目安は、炭水化物が1日3〜5g(運動が1日30〜40分・週3回ほどの人)、5〜8g(強い運動を1日2〜3時間・週5〜6回の人)、8〜10g(強い運動を1日3〜6時間・週5〜6日の人)です。たんぱく質は、運動している人のほとんどが1日1.4〜2.0gで十分とされています
  • 体重70kgなら、炭水化物は1日210〜350g(強い運動を1日2〜3時間・週5〜6回行う人は350〜560g、1日3〜6時間行う人は560〜700g)、たんぱく質は98〜140gです
  • HYROXの練習がISSNのどの行にあたるかを決めた出典はありません。編集部が時間だけで比べると、週3〜4日・1回45〜60分の練習は3〜5gの行に近く、練習が増えるほど5〜8gの行に近づきます。Centrの栄養士はHYROXの選手に4〜7gを示しています
  • 主食は1つ分が炭水化物約40g(ごはん普通盛りで約60g)、主菜は1つ分がたんぱく質約6g(肉料理1人前で約18g)と数えると、グラムを料理の数に直せます
  • たんぱく質は1回20〜40gを3〜4時間おきに分けます。とる時間は練習の前でも後でもかまいません
  • 水分は、練習の前後の体重で確かめます。体重の2%以上が減らない量が目安です
  • 食べる量が足りないまま練習を続けると、筋肉量や骨密度の低下、けが、月経の乱れにつながることがあります。体重が保てているかを確かめます
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