トレーニング · 10 MIN READ
HYROXの1週間前・2週間前の練習|大会直前の調整(テーパー)をトレーニングガイドと研究で比較
HYROX(ハイロックス)の大会の1〜2週間前は、練習の量を減らし、ペースや重さは落としすぎずに疲れを抜く「テーパー(テーパリング)」の期間です。海外のトレーニングガイドの多くと競技者を対象にしたメタ分析はこの点で一致していますが、最後のきつい練習を何日前にするかは記事によって違います。期間・練習量・強さ・最後のきつい練習を表で比べ、ダブルス・リレーで出る人や遠征する人の調整も整理しました。

HYROX(ハイロックス)の大会の1〜2週間前は、練習の量を減らし、ペースや重さといった強さは落としすぎずに、たまった疲れを抜く期間です。この期間を「テーパー(テーパリング)」と呼びます。海外のトレーニングガイドの多くと、競技者を対象にした研究のまとめ(メタ分析)は、「量を減らし、強さは保つ」という点で一致しています。
一方で、調整に何日かけるか、最後のきつい練習を何日前にするかは、記事によって違います。この記事では、期間・練習量の減らし方・強さ・最後のきつい練習の4点を表に並べ、一致している点と違う点を分けました。友達やパートナーとダブルス・リレーで出る人、遠征して出る人、シーズンに何回も出る人の調整もまとめています。
根拠にしたのは、海外のHYROX指導・情報サイトとメディアの記事6件(Rox Lyfe、Hyrox Vault の2本、Hello Hyrox、RMR Training、Women's Health 南アフリカ版)、練習計画の記事3件(PureGym、RitFit、TRX)、2007年に発表されたメタ分析の抄録です。どれもHYROX公式の規定ではなく、指導者・研究者の一般的な助言です。10月2日時点で確認しました。前日の過ごし方はHYROX前日にやることに詳しくまとめています。
テーパー(テーパリング)は大会前に練習を減らして疲れを抜く期間
テーパーは、大会の前に練習を減らし、たまった疲れを抜いて、当日に心身ともに最もよい状態で臨むための期間です。練習を続けている間は、たまった疲れが体力の伸びを隠しています。疲れが抜けると、それまでに積み上げた体力を当日に出せるようになる、と説明されます(Rox Lyfe、Hyrox Vault)。
練習を減らすと体力が落ちるのでは、と心配になるかもしれません。Rox Lyfeは、体力はつけるときより保つときのほうが少ない練習量で済むとしています。ただし減らしすぎは逆効果です。同じRox Lyfeは14日間何もしなければ体力が落ち、当日に体が重く感じるおそれがあるとし、Hyrox Vaultは練習しない状態が約2週間続くと体力が落ち始めるとしています。
また、大会の直前に体力を上積みすることはできない、とする記事が複数あります。RMR Trainingは大会の2週間前から大きく体力はつかないとし、Hyrox Vaultは練習の効果が十分に表れるまで最低7〜14日かかるとしています。直前の練習は、体力をつけるためではなく、疲れを抜きながら体の動きを保つためのものです。
大会直前の調整をトレーニングガイドと研究で比べた表

2週間前から当日までを並べると、練習の量は少しずつ減らして大会の週に大きく減らし、ペースや重さは前日まで普段どおりに保つ、という流れになります。最後のきつい練習の時期だけは記事によって違います。記事ごとの数字は次の表のとおりです。
出典 | 調整の期間 | 練習量の減らし方 | 強さ(ペース・重さ) | 最後のきつい練習 |
|---|---|---|---|---|
Rox Lyfe | ふつう7〜14日 | 10〜15%減から始め、大会に近づくにつれて50%減まで | ほぼ普段どおり | 土曜の大会なら木曜が最後の練習 |
Hyrox Vault(最後の4週間) | 大会の3週間前から量を減らす | 普段より20〜30%減の週 → ピーク時の40〜50%の週 → 大会の週は15〜25分の練習を3〜4回 | 大会の週まで保つ | 最後の4週間の1週目に高強度の練習 |
Hyrox Vault(大会の週) | 7日間 | 7日前の30〜40分の練習のあとは短く軽く | 7日前は力感70〜80% | 7日前 |
Women's Health 南アフリカ版 | 大会の週 | 40〜60%減 | レースペースで短く、限界までは追い込まない | 全身を使う強い練習は3〜4日前まで |
Hello Hyrox(初出場向け) | 7日間 | 減らす | 6日前から高い強度を避ける | 7日前に軽い重さで動きの確認だけ |
練習計画3件(PureGym・RitFit・TRX) | 最後の1〜2週間 | 30〜50%減 | 保つ(PureGymは軽いスピード練習を残す) | RitFitは大会前の2日間を休み、TRXは最後の48時間は軽い動きだけ |
メタ分析(Bosquetら、2007年) | 2週間 | 41〜60%を徐々に減らす | 変えない(練習の頻度も変えない) | — |
表の「—」は、その記事に書かれていないことを示します。メタ分析は、競技者を対象にしたテーパーの研究27件をまとめたもので、HYROXを対象にした研究ではありません。
多くの記事と研究が一致しているのは「量を減らし、強さは保つ」こと
比べた記事のうち7件が、テーパー中は練習の量を減らし、強さは保つとしています。Rox Lyfeは強さ(走る速さ・扱う重さ)はほぼ普段どおりにし、量を減らして強さを保つほうがその逆よりよいとしています。Hyrox Vaultは、強度を下げると当日に体のキレがなくなり、量を減らせば疲れが抜けると説明しています。RMR Trainingは大会の2週間前からは強度を保って疲れを減らすとし、Women's Health 南アフリカ版は、レースペースの短い練習にしつつ、限界まで追い込まないよう書いています。練習計画の記事も、PureGymは軽いスピード練習を残す、RitFitは量を減らしつつ強度は保つ、TRXは短く鋭い練習で強度を保つとしています。
メタ分析も同じ方向です。成績を最も高める方法として、期間は2週間、練習量を41〜60%、徐々に減らし、練習の強度と頻度は変えないことを示しています。つまり、練習の回数はそのままにして、1回ごとの量を短くする形です。
例外は、初出場の人向けに書かれたHello Hyroxです。最後の7日間は強度も量も落とすとし、6日前からは高い強度を避けて、会話できる速さの20〜30分のジョグなどにするよう勧めています。どちらに合わせる場合も、量を減らす点は共通です。強さの扱いに迷う場合は、強さを保つ7件のうち、Women's Health 南アフリカ版のように「レースペースで短く、限界までは追い込まない」形にとどめる方法があります。
最後のきつい練習の時期は記事によって違う
最後のきつい練習を何日前にするかは、記事ごとに次のように分かれています。
- Hyrox Vault の大会の週の記事: 7日前が最後の意味のある練習。30〜40分の中程度の強さで、4〜5kmのランと3種目を力感70〜80%で行う軽い通し練習が理想。全力のインターバル、重い筋力練習、45分を超える練習は避ける
- Hyrox Vault の最後の4週間の記事: 最後の高強度の練習と、最後の重い種目のサーキットは、最後の4週間の1週目に入れる
- Women's Health 南アフリカ版: 全身を使う最後の強い練習は3〜4日前ごろ
- Hello Hyrox: 7日前は軽い重さか重さなしで種目の動きを確かめる技術の練習だけ
- Rox Lyfe: 土曜の大会なら最後の練習は木曜で、前日は休む
全種目を通す練習(フル・シミュレーション)については、本番と同じくらい体に負担がかかるため、Hybrid Pro Coachは大会前の最後の2週間には入れないとし、Hyrox Vaultは大会の3〜4週間前に1回だけとしています。RMR Trainingも、大会が近づいてから安心するために通し練習やベンチマークの練習を繰り返して体力を確かめないよう書いています。大会当日が試験で、それまでは積み上げたものを落ち着かせる期間だ、という考え方です。通し練習の組み方はHYROXのシミュレーションにまとめています。
記事どうしで重なるのは、最後の2週間に全種目の通し練習を入れないことと、大会の週に練習の量を増やさないことです。比べた記事に、この2つと反対のことを勧めるものはありません。最後のきつい練習を7日前にするか3〜4日前にするかは、普段の練習量や、きつい練習のあと何日で疲れが抜けるかに合わせて選びます。
1週間前から前日までの練習の例(Hyrox Vaultの7日間)
1日ごとの例として、Hyrox Vault の大会の週の記事が示す7日間を並べます。
- 7日前: 30〜40分の中程度の練習(4〜5kmのランと3種目を力感70〜80%で)
- 6日前: 30分の楽なラン(会話できる速さ)と、15分の可動域の練習
- 5日前: 20分の中にレースペース30秒を4本
- 4日前: 完全休養
- 3日前: 20分の楽なランと、15秒ほどの流しを4本
- 2日前: 遠征するなら移動の日。着いたら15分の軽いジョグ
- 前日: 10〜15分のごく軽い動き(短い散歩でもよい)
同じHyrox Vaultの最後の4週間の記事は、大会の週の練習を15〜25分を3〜4回とし、大会前の48時間は練習を入れないとしています。前日を休むか散歩程度にする点は、Rox Lyfe、Hyrox Vault、Hello Hyroxの3件で一致しています。Rox Lyfeは、前日に軽いジョグを20分ほどする人もいると書いています。
この例は1つの記事が示した形です。Rox Lyfeは、テーパーの中身は人によって違い、普段の練習量が多い人ほど調整中も多めの練習で疲れを抜けるとしています。自分の普段の1週間を基準にして、回数はなるべく変えずに1回ごとの時間を短くしていくと、メタ分析の結果(頻度は変えずに量を減らす)に沿った形になります。
練習を減らした分の時間でやること
練習を減らすと、時間と気持ちが余ります。Rox Lyfeは、その時間を会場までの移動の計画、荷造り、当日の補給の計画、種目の順番を覚えること、種目とランごとの目標タイムを決めてペースを考えることに使うよう勧めています。テーパーは体だけでなく気持ちも休める期間で、精神的な疲れも当日の成績に響くとしています。ペースの決め方はHYROXのペース配分、当日の補給はHYROXの補給にまとめています。
睡眠も、この期間に優先したいことです。Hyrox Vaultは大会の前の週に8〜9時間の質のよい睡眠をとることが、どの練習を足すよりも当日の成績に効くとし、Hello Hyroxは大会の週は前夜だけでなく毎晩7〜9時間の睡眠を優先するよう書いています。前夜によく眠れなくても、それより前の数日の睡眠のほうが大事だとする記事が3件あります。
RMR Trainingは、練習以外のストレスもできるだけ増やさないよう勧めています。予定を詰めない、睡眠を優先する、移動の慌ただしさを減らす、家事を手伝ってもらう、といったことです。
練習を減らすと、脚が重い、だるい、やる気が落ちる、体力が落ちた気がする、といった感覚が出ることがあります。Hyrox Vaultはこれを大会の7〜12日前にほとんどの人に出る一時的なものとし、ふつう大会の3〜4日前には消えるとしています。不安になって練習を足すと回復が遅れ、疲れを残したまま当日を迎えることが多い、とも書いています。
大会直前にやらない方がいいこと
直前の時期にやらない方がいいこととして、複数の記事が次の点を挙げています。
- 体が慣れていない新しい刺激を足さない(ウォールボールの重さを変える、ランジやスレッドの練習を急に足す、新しい種類の練習をする)。RMR Trainingは筋肉痛・疲労・けがの原因になるとしています
- 遅れを取り戻そうと練習を足さない。練習不足に感じても量を増やさない
- 大会の直前に体重を落とそうとしない。練習量が減って空腹を感じにくくなっても、食事を減らさない
- 大会の週と当日に、新しい靴・食べ物・補給食・サプリメント・ギアを試さない
RMR Trainingは、大きな新しい練習・食事の変更・ギアの変更は、重視する大会の6〜8週間前から避けるのが安全な目安だとしています。準備期間が短い人の優先順位はHYROXまで1ヶ月(4週間)でできることにまとめています。
ダブルス・リレーで出る人、遠征する人、何回も出る人の調整

ダブルス・リレーで出る人は、シングルスほど長い調整をしなくてよい可能性があります。Rox Lyfeは、HYROXでは出る部門も調整の長さに関わり、シングルスはダブルスやリレーより長めのテーパーがよい可能性がある、としています(断定はしていません)。調整の期間は7〜14日の範囲で、普段の練習量、過去の調整の経験、練習以外のストレス、その大会をどれだけ重視するかで決めるとしています。部門ごとのルールはダブルスとリレーの記事にまとめています。
遠征して出る人について、Hyrox Vaultは大会の24〜36時間前に着くのがちょうどよいとしています。落ち着く時間があり、退屈したり外食が増えすぎたりしない長さだからです。着いたら15分の軽いジョグで座りっぱなしだった脚をほぐし、移動中は電解質の入った飲み物を足し、事前の受付が開いていればその日に済ませるよう書いています。Hello Hyroxは、前日は完全休養が理想としつつ、移動した場合や体がとても硬い場合は10〜15分の散歩はよいとしています。日本の大会の会場と日程は大会ページにまとめています。
シーズンに何回も出る人について、Rox Lyfeは、大会のたびに2週間の調整と1週間の回復をとると練習を減らす期間が長くなりすぎるとして、しっかり調整する大会をシーズンに1〜2つ選び、それ以外は調整を短くして出ることを受け入れるよう勧めています。Hyrox Vaultは、8〜10週ごとに大会に出る人には2週間の調整(大会の前の週に練習量を30%減らし、大会の週にさらに30%減らす。強度は保つ)を勧め、大会の1週間後に普段の練習に戻すとしています。
KEY TAKEAWAYS
- HYROXの大会の1〜2週間前は、練習の量を減らし、ペースや重さは落としすぎずに疲れを抜く「テーパー(テーパリング)」の期間です。直前に体力を上積みすることはできないとする記事が複数あります
- 量の減らし方は記事によって幅があり、Rox Lyfeは10〜15%減から始めて50%減まで、Women's Health 南アフリカ版は大会の週に40〜60%減、競技者を対象にしたメタ分析は2週間で41〜60%減としています
- 比べた記事のうち7件とメタ分析は、強さは保つとしています。初出場向けのHello Hyroxだけは、最後の7日間は強度も落とすとしています
- 最後のきつい練習は、Hyrox Vaultの7日間の記事は7日前、Women's Health 南アフリカ版は3〜4日前までと分かれます。最後の2週間に全種目の通し練習を入れないことと、大会の週に量を増やさないことは、比べた記事と食い違いません
- ダブルス・リレーはシングルスより短めの調整でよい可能性があり、遠征するなら24〜36時間前に着いて15分ほど軽くジョグする、とする記事があります。前日は休むか散歩程度にします
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