トレーニング · 6 MIN READ
HYROXのシミュレーション(本番形式の練習)のやり方
本番と同じ「ラン+種目」を通しでこなす練習「シミュレーション」を、いきなり全部やるのではなく段階を踏んで積み上げる組み方を、海外のトレーニングガイドの比較から整理しました。器具がそろわない場合の代わりの方法も紹介します。

HYROX(ハイロックス)の本番は、1kmのランと1種目を8回繰り返す構成です。この形をそのまま練習で再現するのが「シミュレーション」と呼ばれる通し練習で、いきなり8種目・8kmを本番と同じ重さでやる必要はありません。種目の数と力の入れ具合を段階的に増やし、最後の3〜4週間に1回だけ本番と同じ構成を通す、という組み方が海外のトレーニングガイドで共通しています。
この記事は、HYROXの公式な種目規格と、シミュレーション練習を扱う海外のトレーニングガイドを比較して、段階の踏み方・器具がそろわない場合の代わりの方法・ジムを頼る選択肢を整理しました。
「シミュレーション」とは何をする練習か
HYROXの公式ルールブックでは、レースは1kmのランのあとに1種目を行い、これを8回繰り返す構成と定められています(ラン合計8km・8種目)。シミュレーションは、この「ラン→種目→ラン→種目…」という流れを、本番前に自分で組んで練習することを指します。
多くのトレーニングガイドが強調するのは、種目そのものの練習だけでなく、ランから種目、種目からランへの切り替え自体を練習する必要があるという点です。STRIDE Fitnessは「切り替えの区間(Roxzone)を歩いて通過すると取り戻せない時間を失う」と指摘し、Traverse Fitnessも「ステーション間の時間はすぐに積み上がる」として切り替えの練習を勧めています。Gymsharkはさらに踏み込んで「レースで一番厳しいのは種目そのものより、ラン⇄種目の切り替えそのもの」だとしています。走った直後に種目を始める・種目を終えてすぐ走り出す、という感覚は、種目とランを別々に練習していても身につきません。
本番までの目安:3段階で通しの負荷を上げる
Hyrox Vaultのトレーニングガイドは、本番までの週数に合わせて、力の入れ具合(力感)を3段階に分けて通し練習を積むよう勧めています。
段階 | 目安の時期 | 力感 | 構成 | 所要時間 |
|---|---|---|---|---|
ミニ・シミュレーション | 10〜12週間前 | 70% | 4種目(スキーエルゴ・スレッドプッシュ・スレッドプル・バーピーブロードジャンプ)+500mランを4本 | 約40分 |
レースペース・シミュレーション | 6〜8週間前(2回) | 85% | 公式と同じ8種目+750mランを8本 | 55〜65分 |
フル・シミュレーション | 3〜4週間前(1回だけ) | 100% | 公式と同じ8種目+1000mランを8本 | 70〜100分以上 |
段階を分ける狙いは、種目の数と1回あたりの負荷を先に減らし、切り替えの感覚とペース配分だけを先に体に覚えさせることです。ミニ・シミュレーションの種目の重さ・距離は、本番と同じ規定値をそのまま使います(種目を減らすだけで、重さは軽くしません)。スレッドプッシュ・スレッドプルは規定の重量のまま扱うため、フォームに不安がある場合は無理せず軽い重量から始め、通っているジムのスタッフやコーチに確認しながら行ってください。

別のトレーニングガイド(Hybrid Pro Coach)は、週数ではなく1回あたりの負荷の大きさで「ミニ/ハーフ/フル」の3段階に分ける、少し違う組み方を示しています。ハーフ・シミュレーションでは、8種目のうち前半4種目(スキーエルゴ・スレッドプッシュ・スレッドプル・バーピーブロードジャンプ)か後半4種目(ローイング・ファーマーズキャリー・サンドバッグランジ・ウォールボール)のどちらかに絞って、1kmランを4本と組み合わせます。種目数を半分にすることで、1回の練習にかかる時間と回復の負担を抑えながら、本番の前半・後半どちらかの通しの感覚を確認できるベンチマークとして使えるという考え方です。この記事はハーフ・シミュレーションを2〜3週間に1回、フル・シミュレーションは6〜8週間前に組み、大会前最後の2週間には入れないよう勧めています。
フル・シミュレーションを行う時期は、トレーニングガイドによって幅があります。上表のHyrox Vaultは大会の3〜4週間前に1回だけ、Hybrid Pro Coachは6〜8週間前を勧め、いずれも大会直前(最後の2週間)には行わないとしている点は共通しています。時期に迷う場合は、大会の2週間より前で、かつフル・シミュレーション後の回復日数(5〜7日程度)を確保できるタイミングに設定してください。
種目の距離・重さは本番の規定に合わせる
シミュレーションで使う各種目の距離・重さは、部門(女性/男性・オープン/プロ)で規定が変わります。以下はオープン部門(女性/男性)の規定です。
順番 | 種目 | 距離・回数 | 重さ(女性/男性) |
|---|---|---|---|
1 | スキーエルゴ | 1000m | ― |
2 | スレッドプッシュ | 50m | 102kg/152kg(ソリ込み) |
3 | スレッドプル | 50m | 78kg/103kg(ソリ込み) |
4 | バーピーブロードジャンプ | 80m | ― |
5 | ローイング | 1000m | ― |
6 | ファーマーズキャリー | 200m | ケトルベル片手16kg/24kg |
7 | サンドバッグランジ | 100m | サンドバッグ10kg/20kg |
8 | ウォールボール | 100回 | ボール4kg/6kg |
この順番と規定は、女性/男性・オープン/プロで距離やレップ数自体は変わりませんが、重さはプロ部門でさらに重くなります(詳細はHYROXの重量一覧)。シミュレーションを組むときは、まず自分の部門の重さで、この順番どおりに種目を並べるのが基本です。
器具がそろわないときは
自宅や近所のジムに8種目すべての器具がそろっていることは多くありません。この場合、無理に週に何度もフル・シミュレーションをやろうとする必要はありません。筋トレを中心にしてきた選手向けのトレーニングガイドは、本番と同じ全種目を毎回通すのは効率が悪く、疲労だけが大きくなると指摘しており、準備期間の中盤から終盤にかけては、代わりに週1回、1kmランを3〜6本と、その時点で持っている種目を組み合わせた「ブリックセッション」(全種目そろっていない部分的な通し練習)で十分だとしています。
持っていない種目は、代用トレーニングに置き換えて構いません。種目ごとの代わりの動きは以下にまとめています。

自宅での練習の考え方は自宅でできるHYROXの練習、そろえておきたい器具はHYROXの自宅トレーニング器具の選び方を参照してください。
ジムのドロップイン・レースシミュレーションを頼る
器具を自分でそろえきれない場合、近くのHYROX Training Clubを頼る方法もあります。多くの施設はドロップイン(単発)での利用を受け付けており、本番前に模擬レースを体験できる「レースシミュレーション」の日を設けている施設もあります。自分で組むより先に、まずこうしたドロップインや体験会を試してみるのも一つの手です。
通し練習のあとは回復を優先する
フル・シミュレーションは、本番のレースと同じくらい体に負担がかかります。Hyrox Vaultは「レースと同じように回復を扱い、終えた翌週は軽くする」ことを勧め、Hybrid Pro Coachは「5〜7日程度の回復が必要」で「1つの準備期間で多くても1〜2回まで」としています。フル・シミュレーションをこなした満足感でそのまま練習量を増やさず、次の週は意図的に負荷を落としてください。
本番までの練習計画全体の組み立て方はHYROX初出場のための練習の組み立て、レース当日のペース配分はHYROXのペース配分とRoxzoneの動き方を参照してください。
通し練習や大会のあとの筋肉痛と回復はHYROXのあとの筋肉痛と回復にまとめています。
KEY TAKEAWAYS
- シミュレーションは、本番と同じ「1kmラン→1種目」を8回繰り返す構成を練習で再現すること。種目そのものより、ラン⇄種目の切り替え(Roxzone)自体が練習すべき対象
- 本番までの目安は3段階。ミニ(10〜12週間前・70%・4種目+500m×4)→レースペース(6〜8週間前に2回・85%・8種目+750m×8)→フル(3〜4週間前に1回だけ・100%・8種目+1000m×8)
- 種目の重さ・距離は段階を通して本番の規定値のまま使い、数と本数だけを増やしていく
- 8種目を前半/後半に分けて絞る「ハーフ・シミュレーション」という組み方もある
- 器具がそろわなければ、持っている種目とランだけの「ブリックセッション」や代用トレーニングで十分。週に何度もフル・シミュレーションをやる必要はない
- 器具をそろえきれない場合は、近くのHYROX Training Clubのドロップインやレースシミュレーションの日を頼る選択肢もある
- フル・シミュレーションのあとは回復を優先し、直後の週は練習量を落とす
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