種目 · 12 MIN READ
ローイングマシンの効果と使う筋肉|強度の目安をHYROXの1000mに当てはめる
ローイングマシンは、脚で押し出す力を体幹と腕につなげて漕ぐ全身の有酸素運動です。効果は漕ぐ強さで変わり、運動の強度(メッツ)は5.0から14.0まで開きがあります。メーカーのConcept2の説明、研究者が公開する運動強度の一覧、厚生労働省のガイドを読み、使う筋肉、ペースと強度の対応、カロリー表示の前提、週に漕ぐ量を整理して、HYROX(ハイロックス)の1000mに当てはめました。

ローイングマシンは、脚で押し出す力を体幹と腕につなげて漕ぐ、全身を使う有酸素運動です。中心になるのは腕ではなく脚で、どれだけの運動になるかは漕ぐ強さで大きく変わります。運動の強度を表すメッツで比べると、100W未満で漕ぐときの5.0から、200W以上で漕ぐときの14.0まで、2.8倍の開きがあります。
「体の筋肉の○%を使う」「ローイングマシンで痩せる」という説明を見たときは、その数字が何を根拠にしているかを確かめておくと、期待しすぎや使い方の誤解を避けられます。この記事では、メーカーのConcept2(コンセプト2)自身の説明、研究者が公開している運動強度の一覧、厚生労働省の『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』を読み、使う筋肉、強度の目安、カロリー表示の見方、週にどれくらい漕ぐかを整理しました。出典はいずれも2026年10月4日に確認しています。
フィットネスレースのHYROX(ハイロックス)では、ローイングは8種目のうち5番目に行う種目で、距離は1000mです。記事の最後で、強度の目安を本番の1000mに当てはめます。ジムのローイングマシンを初めて使う人向けの、足の固定やモニターの見方はローイングマシンの使い方にまとめています。漕ぎ方のコツとHYROXでのルールはローイングマシンの使い方とコツにまとめています。
ローイングマシンで使う筋肉は4つの局面ごとに違う
Concept2は、ローイングを「体のすべての大きな筋群が関わる、連動した筋肉の動き」と説明しています。同社はHYROXの公式グローバル器具パートナー(器具の供給元)の1社です。この記事で引く同社の説明は、ローイングマシンのメーカー自身が書いたものです。
1回のストロークは、キャッチ(脚を折りたたんだ構え)、ドライブ(脚で押し出してハンドルを引く局面)、フィニッシュ(引き終わり)、リカバリー(構えに戻る局面)の4つに分かれます。同社の説明では、働く筋肉は局面ごとに次のように変わります。
局面 | 主に働く筋肉 |
|---|---|
キャッチ | 上腕三頭筋が腕を伸ばし、指と親指の屈筋がハンドルを握る。腹筋が上体を前に倒し、背中の筋肉は緩んでいる |
ドライブ | 脚の強い筋肉で始まり、肩の筋肉が収縮する。進むにつれて上腕二頭筋がハンドルを腹部へ引き、上体を開くと背中の働きが増え、臀筋とハムストリングスが股関節を伸ばす |
フィニッシュ | 腹筋が体を安定させ、臀筋と大腿四頭筋が収縮する。上腕二頭筋と背中の多くの筋肉が上体の姿勢を保つ |
リカバリー | 上腕三頭筋が腕を前へ送り、腹筋が上体を前に倒す。シートを前へ滑らせるときにハムストリングスとふくらはぎが収縮する |
ドライブの終わりに腕を引き込む場面では、上半身のほぼすべての筋肉が働くとされています。
この説明を体の部位ごとに並べ直したのが下の図です。脚とお尻はドライブ・フィニッシュ・リカバリーで、腹筋はキャッチ・フィニッシュ・リカバリーで名前が挙がっています。鍛えたい部位がどの場面で使われるかを確かめるのに使えます。

ローイングは腕で引くより、脚で押す動きが中心
Concept2は2018年6月のブログで、ローイングについてのよくある誤解を2つ挙げています。引く運動だと思われているが実際は押す動きのほうが大きいこと、腕の運動だと思われているが実際は脚が中心であることです。
同社の説明では、脚はフライホイール(ハンドルを引くと回る部分)を加速させるのに最も適した道具です。ドライブの初めは腕を伸ばしたままにして、脚とハンドルをつなぐ役にします。そのあと背中を徐々に開き、最後に腕で引き込みます。
この動きを、同社はデッドリフトにたとえています。デッドリフトでは、腕を伸ばしたまま脚の力でバーベルを持ち上げます。ローイングでも重い仕事を担うのは脚で、腕より脚のほうが大きな重さを動かせる、という説明です。
腕については、ランニングや自転車のほかに上半身の運動をあまりしない人にとって、ローイングは腕の筋肉も使う点で特別だと書いています。
腕から先に引いてしまう失敗や、1分あたりのストローク数の目安は、ローイングマシンの使い方とコツで海外のトレーニングガイドを読み比べています。
「脚60%・体幹20%・腕20%」と「筋肉の80%以上」の読み方
ローイングマシンの効果を説明する数字として、Concept2のブログには次の2つが出てきます。
1つ目は、1回のストロークでの筋肉の関わりを「脚60%・体幹20%・腕20%」とする数字です(2018年6月のブログ)。原文は「〜と推定されている」という書き方で、測り方や元になった研究は示されていません。局面ごとの筋肉を説明した同社のページ(Muscles Used While Rowing)には、この割合は載っていません。
2つ目は、ローイングは脚・腕・背中・体幹を使い、「体の筋肉の80%以上」が関わるという数字です(2026年9月21日付のブログ)。ローイングマシンを勧める文脈の一文で、こちらも根拠や測り方は書かれていません。
2つは書き方が違います。前者はストロークでの筋肉の関わりを脚・体幹・腕に分けた割合として、後者は体の筋肉のうち関わるものの割合として書かれていて、同じ物差しの数字とは読めません。「脚が中心で、全身を使う」という方向は、局面ごとの説明と合っています。ただし、どちらも実測値として示された数字ではありません。「腕には20%しか効かない」「全身の80%が鍛えられる」のように、細かい割合として受け取らないほうが安全です。
漕ぐ強さごとのローイングマシンの運動強度
使う筋肉が同じでも、運動としての強度は漕ぐ強さで変わります。強度は「メッツ」という単位で比べられます。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、メッツは静かに座っている状態を1として、その何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示す単位です。
研究者が公開している運動強度の一覧(2024 Adult Compendium of Physical Activities)には、ローイングマシンが出力(ワット)ごとに載っています。
漕ぐ強さ(出力) | 一覧での区分 | メッツ | 500mあたりのペースの目安 |
|---|---|---|---|
100W未満 | 中程度の努力 | 5.0 | 約2分32秒より遅い |
100〜149W | 強い努力 | 7.5 | 約2分32秒〜約2分13秒 |
150〜199W | 強い努力 | 11.0 | 約2分13秒〜約2分01秒 |
200W以上 | 非常に強い努力 | 14.0 | 約2分01秒より速い |
出力を分けない「ローイングマシン全般・強い努力」という行もあり、こちらは7.3メッツです。
ペースの列は編集部が計算しました。ローイングマシンのペースは500mあたりの時間で表し、Concept2はこのペースから出力を求める式(ワット=2.80÷ペースの3乗。ペースは1mあたりの秒数)を公開しています。同社の例では、500mあたり2分05秒が179.2Wです。この式で100W・150W・200Wにあたるペースを求めると、約2分32秒・約2分13秒・約2分01秒になります。
同じ一覧では、時速5.6〜6.3kmの速歩が4.8メッツ、時速9.7〜10.1km(1kmあたり6分強)のランニングが9.3メッツです。100W未満のローイングは速歩と同じくらい、150W以上のローイングはこのペースのランニングより高い強度にあたります。

一覧のメッツは平均的な目安で、ある人が実際に消費したエネルギーを示すものではありません。そのうえで、ローイングマシンでどれだけの運動になるかは、乗った時間だけでは決まりません。同じ10分でも、500mあたり2分40秒で漕ぐ人は5.0メッツ、2分10秒で漕ぐ人は11.0メッツの区分に入り、2倍以上の差があります。
モニターのカロリー表示は体重約79kgの人が前提
Concept2のローイングマシンにはモニター(現行機はPM5)が付いていて、消費カロリーを表示できます。同社の2018年10月のブログによると、この表示は体重175ポンド(約79kg)の人を前提にした式で計算されています。
同社は、個人が実際に消費したカロリーは呼気を分析しないと正確には分からないとしています。そのうえで、自分の体重に合わせて見積もり直せるカロリー計算機を用意し、「有用な近似」と位置づけています。体重が79kgと違う人は、モニターの数字をそのまま自分の消費カロリーとして扱わないほうがよいでしょう。
一方で、この表示は練習どうしを比べる物差しとして使えます。同社によると、計算式は練習ごとでも、Concept2のローイングマシンどうしでも同じ基準で繰り返し使えます。前回より多く漕げたかどうかは、モニターの数字で比べられます。
ローイングマシンで痩せるかどうか
Concept2は2026年9月21日付のブログで、ローイングマシンを含む同社のマシンは、カロリーを使い、心肺機能を高め、活動量を増やすことで減量を支えられると書いています。バランスの取れた食事と組み合わせると体重管理に役立つ道具になりうる、という書き方です。どれくらいの期間で何kg減るかという数字は示していません。
同じブログには利用者の体験談も載っていますが、個人の例です。ローイングマシンに乗れば痩せるとはメーカーも書いておらず、運動量を増やす手段の一つとして、食事と組み合わせることが前提になっています。
関節への衝撃の小ささとランニングとの違い
Concept2は、ローイングは座って行うので着地の衝撃が無く、膝や足首などの関節への衝撃が、ランニングやジャンプに比べて最小限で済むと説明しています。そのうえで、人によって違うので、慣れない運動を始める前には医師に相談するよう添えています。
ランニングの代わりになるかどうかについては、同社自身が、ランニングとまったく同じ生理的な適応を生む運動は無いと認めています。関節への衝撃がはるかに小さい有酸素運動として代わりになる、という位置づけです。
HYROXは1kmのランを8回走るレースです。メーカーが書いているのは、ランニングとまったく同じ適応を生む運動は無いことまでで、HYROXの走る練習の代わりになるかどうかには触れていません。編集部は、走る練習そのものをローイングマシンで置き換えるのは向かないと考えます。ローイングマシンは、着地の衝撃を増やさずに有酸素運動の量を足す手段として使えます。必要な走力の目安はHYROXに必要な走力にまとめています。
週にどれくらい漕ぐか(厚生労働省のガイドの推奨量)
冒頭で挙げた厚生労働省のガイド(成人版)は、次の量を推奨しています。
- 歩行か、それと同じかそれ以上の強さの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上にあたる)
- 息が弾み、汗をかくくらいの運動を週60分以上(強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上)
- 筋力トレーニングを週2〜3日(週4メッツ・時の運動に含めてよい)
同ガイドには、息が弾むような運動を週60分行っている場合、疾病の発症リスクや死亡リスクが約10%低いことが示されている、という記述があります。これは運動全般についての記述で、ローイングマシンに限った研究ではありません。
ローイングマシンは、いちばん軽い区分(100W未満)でも5.0メッツで、ガイドが運動として数える3メッツ以上にあたります。メッツ・時はメッツに時間を掛けた量なので、ローイングマシンだけで週4メッツ・時に届く時間を強さごとに計算すると、次のようになります。
漕ぐ強さ(出力) | メッツ | 週4メッツ・時に届く時間 |
|---|---|---|
100W未満 | 5.0 | 48分 |
100〜149W | 7.5 | 32分 |
150〜199W | 11.0 | 約22分 |
200W以上 | 14.0 | 約17分 |
強く漕ぐほど短い時間で同じ量に届く、という関係を示す計算です。ガイドが具体的な目安として書いているのは「週60分以上」で、「17分でよい」と書いているわけではありません。ガイドは推奨事項の最初に、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むことを挙げています。
筋力トレーニングは、別の項目として週2〜3日が推奨されています。ローイングマシンが筋力トレーニングの代わりになるとは、ガイドにも、今回読んだConcept2のページにも書かれていません。HYROXに向けた筋力の目安はHYROXに必要な筋力にまとめています。
HYROXのローイング1000mに当てはめた強度の目安
HYROXは、1kmのランのあとに1種目を行い、これを8回繰り返すレースです。ローイングは5番目の種目なので、シングルスでは5kmを走り、4種目を終えたあとに1000mを漕ぎます。距離はシングルスでもダブルスでも1000mです。ダンパー(負荷の強さ)はあらかじめ6に設定されていて、選手が何度でも変えられます。ダブルスでは、2人が交代しながら合計1000mを漕ぎます。交代の決まりはダブルスのルールと分担にまとめています。
Concept2の式では、1000mを5分04秒で漕ぐペース(500mあたり約2分32秒)が100W、4分01秒で漕ぐペースが200Wにあたります。
日本の大会の例として、千葉大会(2026年8月)のシングルス・オープンを見ます。完走タイムが真ん中の順位付近だった男子5人はローイングに4分54秒〜5分38秒、女子5人は5分10秒〜6分23秒かけていました。500mあたりに直すと、男子が2分27秒〜2分49秒、女子が2分35秒〜3分12秒です。区間タイムから計算すると、10人のうち8人は100Wに届いていません。一覧では「中程度の努力」(100W未満)の区分に入るペースです。ただし、これは漕ぐペースだけを一覧に当てはめたもので、5kmを走ったあとに漕ぐ本番の体感の強さを表すものではありません。
この数字は、公式サイトの結果ページを編集部がAIツールを使ってブラウザで閲覧して集計したもので、全件を人の手で照合した数字ではありません。男女5人ずつの例で、部門全体の傾向を表す統計でもありません。500mあたりの数字は、公式の結果ページに表示されたローイングの区間タイムを2で割った平均です。漕いでいる途中のペースの上下や、止まった時間があったかどうかは区別できません。種目ごとの時間のかかり方はHYROXの種目別タイムの目安にまとめています。
モニターに出る500mあたりのペースを2倍すると、そのペースで漕ぎ続けたときに1000mにかかる時間になります。500mあたり2分30秒なら5分ちょうど、2分50秒なら5分40秒です。この2つは、千葉大会の例で男子の範囲と女子の範囲にそれぞれ入るペースとして挙げたもので、目標のペースではありません。練習中の表示を、本番の例と見比べるための換算です。本番では5kmを走ったあとに漕ぎます。海外のトレーニングガイド2件は、最初の200mで飛ばしすぎないことを勧めています。
ローイングマシンを使えるジムはローイングマシンの使い方とコツのページで紹介しています。チェーンのジムにマシンがあるかを公式サイトで確かめる方法はエニタイムやゴールドジムでHYROXの練習はできる?に、マシンが無いときの練習はローイングの代用トレーニングに、自宅に置く場合の値段はローイングマシンの値段と買い方にまとめています。
KEY TAKEAWAYS
- ローイングマシンは、脚・お尻・体幹・腕を1回のストロークの中で順に使う運動です。Concept2は「体のすべての大きな筋群が関わる」と説明しています。中心は脚で、引く動きより押す動きのほうが大きい運動です
- 「脚60%・体幹20%・腕20%」は推定として書かれた数字、「筋肉の80%以上」は根拠が示されていない数字です。細かい割合としては受け取らないほうが安全です
- 運動の強度は漕ぐ強さで変わり、100W未満の5.0メッツから200W以上の14.0メッツまで2.8倍の差があります。500mあたり約2分32秒が100Wの目安です
- モニターのカロリー表示は体重約79kgの人が前提です。自分の消費量そのものではなく、練習どうしを比べる物差しとして使えます
- 厚生労働省のガイドは、息が弾み汗をかくくらいの運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日勧めています。ローイングマシンはいちばん軽い区分でも3メッツ以上の運動にあたります
- HYROXのシングルスでは、5kmのランと4種目のあとに1000mを漕ぎます。千葉大会で真ん中の順位付近だった人のローイングは、男子が4分54秒〜5分38秒、女子が5分10秒〜6分23秒でした
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