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トレーニング · 10 MIN READ

ファーマーズウォークの効果|使われる筋肉を測った研究とHYROXの重さ

ファーマーズウォーク(ファーマーズキャリー)の効果を、筋肉の活動を測った研究から部位ごとに整理しました。同じ重さで比べると、腰の筋肉は歩くと持って立つだけの約3倍使われ、お腹の筋肉はプランクのほうが大きく、握力が伸びるかは確かめられていません。研究で使われた重さとHYROX(ハイロックス)の重さの比較、普通のジムでの始め方も扱います。

ファーマーズウォークの効果|使われる筋肉を測った研究とHYROXの重さ

ファーマーズウォーク(ファーマーズキャリー)の効果のうち、測定で確かめられているのは腰の筋肉がよく使われることです。同じ重さを持って立つだけの場合と比べると、歩いたときの腰の筋肉の活動は約3倍でした。お腹の筋肉は同じ重さのプランクのほうが大きく使われ、握力が伸びることを確かめた研究は見つかりませんでした。

HYROX(ハイロックス)公式サイトは、背中の筋肉・体幹・握力が求められる種目として紹介しています。海外のトレーニングガイドも握力と体幹を挙げています。部位ごとに見ると、測って確かめられていることと、まだ確かめられていないことが混ざっています。HYROXでは6番目の種目で、ケトルベルを両手に持って200mを運びます。

読んだのは、HYROX公式サイトの種目紹介とルールブック、ファーマーズウォークを扱った査読論文3本、HYROXの模擬レースを測った論文1本、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の会員誌の解説記事、海外のトレーニングガイド3件(Gymshark・Traverse Fitness・Hyrox Vault)です(2026年10月4日時点)。

01

HYROX公式が挙げているのは背中の筋肉・体幹・握力

ファーマーズウォークは、重りを両手に1つずつ持って歩く種目です。ファーマーズキャリーとも呼ばれます。HYROXでは「ファーマーズキャリー」の名前で、8種目の6番目に行います。ケトルベルを両手に持ち、200mを運びます。

HYROX公式サイトの種目紹介は、この種目に求められるものとして、上半身の背中の筋肉・体幹・握力の3つを挙げています。海外のトレーニングガイドも同じ見方で、Traverse Fitnessは「握力と体幹の安定性が主役になる」と書いています。

これらは種目の説明で、どの筋肉がどれだけ使われるかを測った数字は添えられていません。次の節から、実際に測った研究を見ていきます。本番のルールや判定の基準はファーマーズキャリーの種目ページにまとめています。

02

歩くと腰の筋肉の活動は持って立つだけの約3倍になる

2024年に学術誌 International Journal of Exercise Science に載った論文は、ファーマーズウォークを、同じ重さを持って立つだけのファーマーズホールド、そしてプランクと比べています。

参加したのは大学生年代の18人(女性12人・男性6人)です。全員が筋力トレーニングの上級科目を履修し、今回比べた種目の安全なやり方を学んでいました。重さは1人ずつ決めています。プランクの姿勢をとったときに前腕にかかる体重を量り、それと同じ重さをダンベル2つに分けて持ちました。平均は合計50.7kg、1つあたり約25kgです。歩く時間と持つ時間は、25mを歩くのにかかった時間に5秒を足した長さにそろえています。

測ったのは背骨まわりの4つの筋肉です。腰側は脊柱起立筋の腰部(脊柱起立筋の一部である最長筋を、腰の高さで測っています)と多裂筋、お腹側は腹直筋と外腹斜筋です。筋肉が働くときの電気的な活動を皮膚の上から記録する筋電図を使っていて、数値は、その筋肉が出せる最大の力に対する割合です。

同じ重さで、持って歩く(ファーマーズウォーク)・持って立つだけ・プランクの3つを比べた、背骨まわりの4つの筋肉の活動の棒グラフ。腰の筋肉(脊柱起立筋の腰部・多裂筋)は持って歩くときが最も大きく、お腹の筋肉(腹直筋・外腹斜筋)はプランクが最も大きい
出典:Ellestad・Holcomb(2024年)International Journal of Exercise Science。数値は体の右側(2026年10月4日確認)

歩いたときは、持って立つだけのときより、4つの筋肉すべてで左右とも活動が大きくなりました。差が大きかったのは腰の筋肉です。

  • 脊柱起立筋の腰部:歩く 右16.4%・左13.7%/立つだけ 右5.6%・左4.5%
  • 多裂筋:歩く 右16.3%・左14.9%/立つだけ 右5.1%・左5.3%

どちらも歩くほうが約3倍です。著者は、歩く動きが加わることで腰の筋肉の活動が増えたとみています。

ファーマーズホールドは歩く場所が無くてもできるので、握力を鍛える補助種目として紹介されることがあります。ただ、この研究では、ホールドの活動は4つの筋肉すべてで6.9%以下でした。この研究で歩いた時間は短く(25mを歩く時間に5秒を足した長さ)、それでも腰の筋肉の活動はホールドの約3倍でした。腰の筋肉まで使いたいときは、短い距離でも歩ける場所を選びます。

研究で使われた重さとHYROXの重さの比較

この研究で持った重さを、HYROXの本番の重さ(2026/27シーズン)と並べます。

片手の重さ

両手の合計

研究に参加した女性(12人の平均)

23.4kg

46.8kg

研究に参加した男性(6人の平均)

29.4kg

58.8kg

HYROX 女子(シングルス・ダブルス・リレー)

16kg

32kg

HYROX 男子(シングルス・ダブルス・リレー)、女子プロ、ミックスダブルス

24kg

48kg

HYROX 男子プロ

32kg

64kg

研究に参加した女性が持った重さは、HYROXの女子プロやミックスダブルスの24kgとほぼ同じで、女子の16kgより重い負荷です。男性が持った重さは、男子の24kgと男子プロの32kgの間でした。どちらも、大会で使う重さの範囲(片手16〜32kg)に入る負荷です。

一方で、歩いた時間は短く、分析に使われたのは各種目の中央の15秒間です。200mを、ランニングやほかの種目のあとで運ぶHYROXの本番を測った研究ではありません。部門ごとの重さはHYROXの重量一覧にまとめています。

03

お腹の筋肉は同じ重さのプランクのほうが大きく使われる

ファーマーズウォークは体幹に効くと紹介されます。この研究の数字で見ると、体幹のうち大きく使われたのは腰側で、お腹側はプランクのほうが上でした。

同じ負荷のプランクでは、腰の筋肉の活動は脊柱起立筋の腰部が右5.5%・左5.0%、多裂筋が右4.9%・左4.1%で、ファーマーズウォークより小さい値です。お腹の筋肉は逆の結果になりました。

  • 腹直筋(お腹の正面):プランク 右48.8%・左54.1%/ファーマーズウォーク 右10.7%・左8.4%
  • 外腹斜筋(脇腹):プランク 右36.1%・左34.5%/ファーマーズウォーク 右14.2%・左11.1%

腹直筋の活動は、プランクがファーマーズウォークの4倍以上です。著者も、腹直筋を使いたいならプランクを選ぶべきだと書いています。

腹筋を鍛える目的でファーマーズウォークを選んでも、この研究の数字では、お腹の筋肉の活動は大きくありません。腰はファーマーズウォーク、お腹はプランクと、鍛えたい部位で分けて組み合わせます。

04

片手で持つスーツケースキャリーは反対側の腰と脇腹が使われる

重りを片手だけに持って歩く方法は、スーツケースキャリーと呼ばれます。同じ研究では、平均25.3kgを右手に持って歩きました。

右手に持ったので、重りと反対側は体の左側です。このとき、左の腰の筋肉の活動が、比べた5つの種目のなかで最も大きくなりました。左の脊柱起立筋の腰部が29.1%、左の多裂筋が21.0%です。両手で持つファーマーズウォークでは、同じ左側が13.7%と14.9%でした。左の外腹斜筋は33.0%で、プランクの左側の34.5%と有意な差がありません。

著者はこの結果から、2つの使い方を挙げています。

  • 床に伏せる姿勢をとるのが難しい人は、脇腹のトレーニングとして、プランクの代わりにスーツケースキャリーを使える(左右の両側で行う)
  • 腰の筋肉の活動を段階的に上げたいときは、ホールド、ファーマーズウォーク、スーツケースキャリーの順に進められる

片手で持つ方法には注意点もあります。NSCAの会員誌の解説記事は、片手で持って歩くと、2倍の重さを両手に分けて持つ場合より背骨にかかる負荷が大きかったという研究を紹介しています。同じ記事は、片手で持つ方法を両手のファーマーズウォークより難しい種目として扱い、両手から始めるよう勧めています。

HYROXの本番は、両手に1つずつ持って運ぶ種目です。本番の形を練習するなら両手で、腰や脇腹への負荷を変えたいときに片手で、と使い分けられます。

05

ファーマーズウォークで握力が伸びるかは確かめられていない

握力は、ファーマーズウォークの効果として最もよく挙げられます。重りを握って運ぶので、握る力が求められるのは確かです。Gymsharkのトレーニングガイドは、握力を鍛えておかないと前腕や手が脚や体幹より先に疲れ、遅くなったりフォームが崩れたりすると書いています。先ほどの筋電図の研究でも、握力が続かずに決められた持ち方を保てなかった参加者が1人いて、そのデータは分析から外されています。

ただ、握る力が要ることと、続ければ握力が伸びることは別の話です。今回調べた範囲では、ファーマーズウォークを続けて握力が伸びたことを確かめた研究は見つかりませんでした。

近い内容の研究は1つあります。ラグビー選手30人を2つの組に分け、7週間(週2回)トレーニングをしてもらった2015年の研究です。片方の組はファーマーズウォークを含むストロングマン種目を、もう片方は従来型の筋力トレーニングを行いました。握力は両方の組で5〜13%伸び、組の間に有意な差はありませんでした。著者は、ストロングマン種目の組のほうが握力が大きく伸びると予想していたが、そうならなかったと書いています。

この研究のストロングマン種目には、ログリフトやアクスルプレス、重いそり引きなども入っていました。ファーマーズウォークだけの効果を調べたものではありません。握力の測定が1つの角度だけだったことも、著者は限界に挙げています。ファーマーズウォークで握力が伸びるとも、伸びないとも言えない結果です。

NSCAの会員誌の解説記事も、ファーマーズウォークを取り入れると握力が伸びる可能性がある、という書き方にとどめています。

HYROXのタイムと握力の関係を見た研究は、1つ読みました。趣味としてHYROXに取り組む経験者11人が模擬レースを行った研究で、握力は完走タイムと相関しませんでした。11人の結果なので広く当てはまるとは限りませんが、この研究からは、握力がタイムの決め手とは言えません(この研究はHYROXに必要な筋力で紹介しています)。

握力に不安がある人は、ファーマーズウォークだけに頼らず、握力そのものを鍛える補助種目を足す方法があります。Gymsharkは、ファーマーズホールド、プレートピンチ、タオルプルアップ、太いバーを使う種目の4つを挙げています。本番では、ファーマーズキャリーとスレッドプルに限り、大会が用意したチョークを使えます(持ち込める物の決まりはHYROXのグローブの記事にあります)。

06

続けたときの変化を調べた研究は少ない

ここまでの数字は、1回の測定で、そのとき筋肉がどれだけ使われたかを見たものです。何週間か続けた結果、筋肉がどれだけ強くなるかを調べたものではありません。

研究そのものも多くありません。NSCAの会員誌の解説記事は、重りを持って歩く種目の研究は少なく、回数や距離の推奨もほとんど無いと書いています。

力のかかり方を測った研究もあります。経験のあるストロングマン選手6人が、デッドリフトで1回挙げられる重さの70%を持ってファーマーズウォークをした2014年の研究です。ふつうに歩くときより地面を押す力が大きく、歩幅は短く、足の運びのリズムは速くなっていました。著者は、足首や下半身、体幹の強さと安定につながるかもしれないと書いたうえで、それを確かめるには続けてもらう研究が必要だと結んでいます。

筋電図の研究にも限界があります。対象は若くて健康な人だけで、著者は、トレーニングを積んだ人や年齢の高い人を今後の研究の対象に挙げています。測ったのも背骨まわりの4つの筋肉だけです。HYROX公式が挙げる上半身の背中の筋肉や、前腕の筋肉がどれだけ使われるかは、この研究からは分かりません。

鍛えたい部位ごとに、今回の研究から選べる種目を並べ直すと次のようになります。

鍛えたい部位ごとに、研究の結果から選べる種目を並べたカード。腰の筋肉は両手のファーマーズウォーク、お腹の正面はプランク、脇腹はプランクか片手で持って歩く方法、握力は補助種目。測定は1回だけで、続けたときの変化は調べられていない
出典:Ellestad・Holcomb(2024年)・Gymsharkのトレーニングガイド(2026年10月4日確認)
07

普通のジムでファーマーズウォークを始めるときの基本

ケトルベルが無くても、ダンベルを両手に1つずつ持てば同じ形で行えます。筋電図の研究もダンベルで行われました。必要なのは重りと、まっすぐ歩ける場所です。

NSCAの会員誌の解説記事が挙げる基本は次のとおりです。

  • 胴体を起こし、ゆっくり、コントロールして歩く
  • 最初は両手に同じ重さを持つ(運動から離れていた人が始めるときにも向くとされています)
  • ワークアウトの最初にも最後にも入れられる

回数の目安として、同じ記事は「10〜20秒を2〜4本、きついと感じる重さで」という現場の指導者の経験則を紹介しています。科学的な根拠が乏しいので経験則を示す、と記事自身が断っている数字です。

腰の筋肉の活動を段階的に上げたいときの順番として、筋電図の研究の著者が挙げているのは次の3段階です。

  1. 持って立つだけのホールド
  2. 両手に同じ重さを持って歩くファーマーズウォーク
  3. 片手で持って歩くスーツケースキャリー

次の使い分けは、著者の提案ではなく、ここまでに紹介した内容を編集部が並べたものです。

  • 歩く場所が取れない日はホールドにする(握力の補助種目にはなりますが、腰の筋肉の活動は小さくなります)
  • 片手で持つ方法は、両手に慣れてから試す(NSCAの会員誌の解説記事の勧め)
  • 片手で持つときは左右とも行う(研究で活動が大きかったのは、重りと反対側の腰と脇腹でした)

HYROXに出る予定がある人は、自分の部門の重さを両手に持って歩けるかを先に確かめておくと、練習の重さを決めやすくなります。ほかの種目も含めた練習の組み方は普通のジムでできるHYROXの練習メニューに、ケトルベルもダンベルも無いときの方法はファーマーズキャリーの代用トレーニングにまとめています。

08

KEY TAKEAWAYS

  • ファーマーズウォークの効果のうち測定で確かめられているのは、腰の筋肉(脊柱起立筋の腰部・多裂筋)がよく使われることです。同じ重さを持って立つだけの場合の約3倍でした
  • お腹の筋肉は、同じ重さのプランクのほうが大きく使われます。腹直筋の活動はプランクが4倍以上で、腹筋が目的ならプランクが向いています
  • 握力は求められますが、ファーマーズウォークを続けて握力が伸びることを確かめた研究は見つかりませんでした。握力に不安があれば、握力そのものを鍛える補助種目も足します
  • 研究で持った重さは、片手で女性平均23.4kg・男性平均29.4kgです。女性はHYROXの女子プロ・ミックスダブルスの24kgに近く、女子の16kgよりは重い負荷でした。男性は男子の24kgと男子プロの32kgの間です。測ったのは短い時間で、200mを運ぶ本番を測ったものではありません
  • 始めるときは両手に同じ重さを持ち、胴体を起こしてゆっくり歩きます。片手で持つ方法は、両手に慣れてから試します
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