ALL ARTICLES

ギア · 12 MIN READ

HYROXでリストラップとトレーニングベルトは使える? ルール上の扱いと着ける効果

HYROX(ハイロックス)のレースで、トレーニングベルト(ウエイトリフティングベルト)は使えます。公式ルールブックが使ってよい物に挙げている7点の1つです。リストラップは、使ってよい物にも禁止の物にも名前がありません。着ける効果では、リストラップを締めて巻いても握力は変わらなかったという試験(54人)があり、NSCAの依頼で書かれたレビューは、健康な人が普段の運動でベルトを着けることを勧めていません。ルール上の扱い、着け続ける決まり、研究で分かっていること、着けるかどうかを決めるときの確認点をまとめています(2026年10月6日時点)。

HYROXでリストラップとトレーニングベルトは使える? ルール上の扱いと着ける効果

HYROX(ハイロックス)のレースで、トレーニングベルト(ウエイトリフティングベルト)は使えます。公式ルールブックが、レース中に使ってよい物として名前を挙げている7点の1つです。リストラップ(手首に巻いて固定する布のサポーター)は、使ってよい7点にも、禁止の9点にも名前がありません。使ってよい物の中に「リストバンド」はありますが、リストラップを含むかどうかは書かれていません。着けて出たい人は、レース前に主催者へ問い合わせてください。

着けたときの効果では、リストラップは締めて巻いても握力と握力の持久力が変わらなかったという試験があります(CrossFitの愛好者54人)。ベルトは、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の依頼で書かれたレビューが、健康な人が普段の運動で着けることは勧めないとしています。例外は極端に重い物を挙げる競技の場面で、着けるかどうかは本人が決めることだとしています。厚生労働省の職場向けの指針も、一律に着けるのではなく、一人ひとり効果を確かめて決めるよう求めています。

根拠は、HYROX公式ルールブック(シングルス・ダブルス・リレーの3冊、2026/27シーズン)の英語版と日本語版、リストラップと握力の試験の論文(2023年)、NSCAの依頼で書かれたレビュー(2005年)、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(2013年改訂)、国際パワーリフティング連盟(IPF)の競技規則(2026年版)です。どの資料もHYROXの選手を調べたものではなく、HYROXでの効果を測った研究は見つかりませんでした(2026年10月6日時点)。

01

ベルト・リストラップ・リストバンドのルール上の扱い

ルールブックの第10章(リレーは第8章)には、レース中に使ってよい物7点と、常に禁止の物9点のリストがあります。シングルス・ダブルス・リレーの3冊とも同じ項目です。ベルトと手首まわりの物をこのリストに当てはめると、次のようになります。

物

ルールブックでの扱い

使う場合の決まり

トレーニングベルト(ウエイトリフティングベルト)

使ってよい7点に名前がある

スタートからフィニッシュまで自分で持ち続ける。受け渡しはできない

リストバンド

使ってよい7点に名前がある(何を指すかの説明は無い)

ベルトと同じ

リストラップ

使ってよい7点にも禁止の9点にも名前が無い。リストバンドに含まれるかどうかも書かれていない

レース前に主催者へ問い合わせる。リストバンドに含まれない場合は原則禁止で、使うにはレース前に書面の許可が要る

グローブ

使ってよい7点に名前がある(グリップは不可)

ベルトと同じ

ニースリーブ

使ってよい7点に名前がある

ベルトと同じ

イヤホンや時計など、ほかの持ち物の判定はHYROXの持ち込みルールにまとめています。膝の装具は膝サポーターの記事を見てください。

HYROXでベルトを着けたい人、リストラップを着けたい人、ペアやチームで出る人が、レース前に準備することを分けたカード図。ベルトは使ってよい7点の1つで許可の手続きは要らず、スタートからフィニッシュまで自分で持ち続ける。リストラップはどちらのリストにも名前が無く、レース前に主催者へ問い合わせる。リストバンドに含まれない場合は書面の許可が要る。ペアやチームでは受け渡しができないので、それぞれ自分の分を用意する
出典:HYROX公式ルールブック(シングルス・ダブルス・リレー、2026/27シーズン・英語版と日本語版)§10.1(2026年10月6日確認)
02

トレーニングベルトは使ってよい物に名前がある(寸法や材質の決まりは無い)

使ってよい7点の3番目が「Weightlifting Belt」で、日本語版のルールブックは「ウエイトリフティングベルト」と訳しています。ルールブックに書かれているのはこの品目の名前だけで、どんなベルトを指すかの説明はありません。名前からは、ウエイトトレーニングで腰に巻くベルト(ジムでトレーニングベルト、リフティングベルト、パワーベルトと呼ばれている物)のことだと読めます。

幅、厚さ、材質、留め具の種類(レバー式、面ファスナー式など)の決まりもありません。

比べると、パワーリフティングの国際連盟(IPF)の競技規則は、ベルトを細かく決めています。幅は10cm以内、厚さは13mm以内、本体は革やビニールなど伸びない素材で、大会で使えるのは連盟の承認リストに載ったメーカーの物だけです。HYROXのルールブックにはこうした規定が無く、ベルトの種類による区別は書かれていません。

03

ベルトはスタートからフィニッシュまで着け続ける

使ってよい物には条件が付いています。使う・着ける・持つと決めた物は、スタートからフィニッシュまで自分で持ち続けなければなりません。途中で誰かに渡すことも、誰かから受け取ることもできません。受け渡しは「外部からの補助」にあたり、ルールブックは失格になる場合があるとしています。

HYROXは、1kmのランと1種目を8回くり返す競技です。走る距離は部門で違います。

  • シングルスとダブルスは、1人が8kmを走ります(ダブルスは2人で一緒に走ります)。条文の文言どおりに読むと、ベルトを着けると決めた人は、この8kmの間も身につけて走ることになります。種目のときだけ着けて、ランの間はコースの脇に置いておく使い方は、この文言に合いません
  • リレーは4人で分け合い、1人が走るのは1kmを2本、行う種目は2つです。リレーのルールブックも同じ文言ですが、自分の番を待っている間のベルトの扱いは書かれていません

ルールブックで「ベルト」という語が出てくるのは、使ってよい物のリストの1か所だけです。途中で外して置いてよいかどうかや、締め具合を途中で変えてよいかどうかを直接書いた文はありません。条文に無い使い方をしたい人は、レース前に主催者へ問い合わせてください。

ダブルスとリレーのルールブックも、受け渡しについては同じ文言で、相方やチームメイトを例外にする書き方はありません。1本のベルトを2人で交互に使うことはできないので、着けたい人がそれぞれ自分のベルトを用意します。種目の分担の決め方はダブルスのルールとリレーの記事にまとめています。

04

リストラップは使ってよい物にも禁止の物にも名前が無い

リストラップは、手首に巻いて固定する布製のサポーターです。ルールブックの使ってよい7点にも、禁止の9点にも、この名前はありません。

使ってよい7点の4番目に「Wristbands(リストバンド)」があります。ただ、リストバンドが何を指すかの説明は無く、手首を固定するリストラップを含むかどうかは条文からは決まりません。同じルールブックの受付の章(シングルスとダブルスは第11章、リレーは第9章)では、出走するウェーブと部門を見分けるために配られるバンドも「リストバンド」と呼ばれています(手首の見える位置に着ける決まりです)。

IPFの競技規則は、リストラップと汗止めのスウェットバンドを別の物として扱っています。リストラップは長さ1m・幅8cm以内で、巻いてよい範囲は手首の関節の中心から上10cm・下2cmまでです。スウェットバンドは幅12cm以内と別の項目で決めていて、リストラップと重ねて着けることは認めていません。HYROXのルールブックには、こうした区別も寸法もありません。

名前が無い物についての決まりは1つです。使ってよいと書かれていない物は原則として禁止とみなされ、使いたい場合はレース前にレースディレクターから書面の許可をもらいます。許可の無い物は没収され、完走したあとにカスタマーサービスデスクで返してもらえます。

リストラップを着けて出たい人は、レースの前に主催者へ問い合わせてください。日本の大会なら、HYROX JapanのFAQの「お問い合わせ」欄に、カスタマーサービスのメールアドレスが載っています(10月1日確認)。実際の大会で手首に巻いた物がどう扱われているかを書いた公式の資料は、見つかりませんでした。

名前が似ているリストストラップ(バーやハンドルに巻きつけて、握るのを助ける道具)は、リストラップとは別の物です。ルールブックは、使ってよいグローブに「グリップは不可」と添えています。グリップが何を指すかの説明はありません。グローブの扱いはグローブの記事にまとめています。

05

リストラップを締めて巻いても握力は変わらなかった(54人の試験)

リストラップで握力が上がるかを調べた試験があります。2023年に整形外科の学術誌に載ったもので、対象はCrossFitの愛好者54人(18〜40歳、平均32.9歳、女性48%)です。全員が、週4回以上の練習を6か月以上続けていました。

比べたのは、リストラップを締めて巻いた状態と、同じリストラップを圧をかけずに巻いただけの状態です。同じ人が両方の状態でテストを受け、どちらを先にするかは無作為に決めています。テストは、握力計を3秒握って5秒休む動作を12回くり返すものでした。最初の3回の平均を最大握力、最後の3回で保てた握力の割合を持久力としています。

リストラップを締めて巻いたときと、圧をかけずに巻いたときの握力を比べた横棒の図。最大握力は締めて巻いたとき35.6kg、圧をかけずに巻いたとき35.7kg。握力の持久力は77.8%と78.2%で、どちらも統計的に意味のある差は無い
出典:Acta Ortopédica Brasileira に2023年に掲載された試験(CrossFitの愛好者54人)。HYROXの選手を調べた試験ではありません(2026年10月6日確認)

最大握力は、締めて巻いたときが35.6kg、圧をかけずに巻いたときが35.7kgでした。持久力は77.8%と78.2%です。どちらも統計的に意味のある差ではなく(p=0.737、p=0.549)、論文は「リストラップで最大握力と握力の持久力が上がる」という仮説は否定されたと結論しています。手首に巻くバンドやテープでも最大握力は変わらなかったという先行研究があることも、著者は紹介しています。

この試験で分かったのは握力のことだけです。読むときに気をつけたい点が4つあります。

  • 巻く強さは測っておらず、本人の感覚に任せています。著者はこれを試験の限界に挙げています
  • 握力に差が無かったからといって、パフォーマンスに影響しないとまでは言えない、と著者は書いています。手首を巻くと反応が速くなった、関節の位置の感覚が良くなった、手首を反らせる範囲が狭い人でその範囲が広がった、という別の研究があるためです。競技全体への影響は調べていません
  • 当日に手首などに痛みがある人、過去6か月に手首をケガした人、手首の手術を受けた人は対象から外しています。痛みやケガがある人でどうなるかは、この試験からは分かりません
  • 使ったのは布製のリストラップ(長さ35インチ=約89cm、幅3インチ=約7.6cm)で、対象はHYROXの選手ではありません

握力そのものを鍛える方法はHYROXの握力の鍛え方にまとめています。

06

ベルトは健康な人の普段の運動には勧められていない(NSCAの依頼で書かれたレビュー)

ベルトについては、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の依頼で、脊柱のバイオメカニクスの研究者が2005年にまとめたレビューがあります。結論は次の3つです。

  • 利点と欠点を合わせて考えると、健康な人が普段の仕事や運動でベルトを着けることは勧めない
  • 例外は、極端に重い物を挙げる競技の場面(原文は extreme athletic lifting)。ベルトが体幹を安定させ、挙げる動きを助けるように見える
  • 着けるかどうかは、本人が情報を踏まえて決める

レビューは、職場でのベルトの研究から分かっていることとして、次の5つを挙げています。

  • 腰を痛めたことが無い人には、ベルトによる追加の予防効果は見られない
  • ベルトを着けている間にケガをした人は、より重いケガになるおそれがあるように見える
  • 「もっと重く持てる」という感覚を与え、実際に持てる量が増えることもある
  • 腹腔内圧(おなかの中の圧力)と血圧を上げるように見える
  • 持ち上げ方が変わり、背骨への負担が減る人も増える人もいる

競技者に向けた節には、ベルトを着けるかどうかの目安が書かれています。どうしても少しでも重く挙げたいなら着ける。体幹の安定が要るほかの競技の動きを身につけたいなら、おそらく着けないほうがよい。代わりに体幹の筋肉を鍛え、挙げ方の技術を磨くことを勧める、という内容です。

日本の厚生労働省も、近い考え方を示しています。「職場における腰痛予防対策指針」(2013年6月改訂)は、腰部保護ベルトについて、効果は人によって違うので一律に使うのではなく、一人ひとり効果を確かめてから使うかどうかを決めるよう求めています。指針の解説は、腹圧を上げて体幹を支える効果については見解が分かれているとしています。腰痛がある人が着けると、外したあとに腰痛が強まることもあるとも書いています。

2つの資料が主に扱っているのは、職場の作業と、重い物を挙げる動作です。走る・運ぶ・押すが混ざったHYROXでベルトの効果を調べた研究は、見つかりませんでした。

07

ベルトを着けると血圧と心拍数が上がるという報告がある

NSCAの依頼で書かれたレビューは、ベルトと血圧の研究も紹介しています。1989年の研究(男性5人・女性1人)では、デッドリフトなどを幅10cmのベルトあり・なしで行ったところ、挙げている間の血圧(最大15mmHg)と心拍数が、ベルトを着けたときのほうが高くなりました。この研究は、心臓や血管に問題がある可能性のある人は、ベルトを着けて運動するとリスクが高まるかもしれないと結論しています。人数の少ない研究で、内容はレビューの記述で確かめたものです。

レビューは、職場やレクリエーションでベルトを使う場合の条件として、次の点を挙げています。

  • 着ける前に、医療者に心臓や血管のリスクを確かめてもらう
  • ベルトを悪いフォームの代わりにしない
  • 長く使い続ける前提にしない

このほか、レビューには次の記述もあります。

  • 1988年の研究では、ベルトを着けると約19%重い重量を持ち上げる気になった。レビューは、ベルトが誤った安心感を与えるという見方を、ある程度支える結果だとしている
  • プライオメトリクス(跳ぶ・弾むなどの素早い動きの練習)はベルトで妨げられやすく、速さを鍛える練習でベルトを使うのは適切でない

持病がある人の出場の決まりはHYROXに出られる条件に、腰のケガの傾向と受診の目安はHYROXで多いケガと予防にまとめています。

08

HYROXで持ち上げる・運ぶ重さ(部門別)

レビューが例外に挙げていたのは、極端に重い物を挙げる競技の場面でした。HYROXで扱う重さは、部門ごとに決まっています。判断の材料として、持ち上げる・担ぐ・運ぶ3種目(サンドバッグランジ・ファーマーズキャリー・ウォールボール)の重さを並べます。

部門

サンドバッグランジのサンドバッグ

ファーマーズキャリーのケトルベル

ウォールボールのボール

シングルス女子・ダブルス女子・リレー女子

10kg

16kg×2個

4kg

シングルス男子・シングルス女子プロ・ダブルス男子・ダブルスミックス・ダブルス女子プロ・リレー男子

20kg

24kg×2個

6kg

シングルス男子プロ・ダブルス男子プロ

30kg

32kg×2個

9kg

リレーの重量表にあるのは女子と男子の2列だけです。スレッドは持ち上げずに、床の上を押す・引く種目です。スレッドを含む全部の重さはHYROXの重量一覧にあります。

この重さが自分にとって極端に重いかどうかは、人によって違います。必要な筋力の目安はHYROXに必要な筋力にまとめています。

09

着けるかどうかを決めるときに確認すること

ルールと資料から、着ける前に確かめておきたい点は次の5つです。

  • ベルトを着けるなら、ランも含めて本番と同じ使い方を練習で試します。ルールブックは、着けると決めた物をスタートからフィニッシュまで自分で持ち続けるよう求めています
  • ダブルスやリレーで出るなら、着けたい人がそれぞれ自分の分を用意します。相方との受け渡しはできません
  • リストラップは、レースの前に主催者へ問い合わせます。リストバンドに含まれない物とされた場合は書面の許可が要るので、使えなかった場合に備えて、巻かない状態でも種目を練習しておきます
  • ベルトを着ける前に、医療者に心臓や血管のリスクを確かめてもらいます。NSCAの依頼で書かれたレビューが、職場やレクリエーションでベルトを着けようとする人全員に求めている条件です
  • 腰に痛みがある人は、ベルトを使うかどうかを整形外科などで相談します。厚生労働省の指針も、腰部保護ベルトを使う場合は必要に応じて医師に相談するのが適当だとしています
10

KEY TAKEAWAYS

  • トレーニングベルト(ウエイトリフティングベルト)は、ルールブックが使ってよいと明記している7点の1つです。幅や材質の決まりはありません
  • ベルトを使うなら、スタートからフィニッシュまで自分で持ち続けます。ダブルスやリレーでも、相方との受け渡しはできません
  • リストラップは、使ってよい物にも禁止の物にも名前がありません。着けて出たい人は、レース前に主催者へ問い合わせてください
  • リストラップを締めて巻いても、握力と握力の持久力は変わりませんでした(CrossFitの愛好者54人の試験)
  • NSCAの依頼で書かれたレビューは、健康な人が普段の運動でベルトを着けることを勧めていません。厚生労働省の指針も、一律に使わず一人ひとり効果を確かめるよう求めています
  • どの資料もHYROXの選手を調べたものではありません。HYROXでの効果を測った研究は見つかっていません
HI

NEWSLETTER

ギアや大会の新しい情報を知りたい方へ

ギアの記事や、大会・ジムの新しい情報をメールでお届けします。登録はメールアドレスだけで、いつでも停止できます。

ご登録の前にプライバシーポリシーをご確認ください。

HYBRID INDEX™© 2026 HYBRID INDEX MEDIATRAIN HARD. LIVE WELL. STAY CURIOUS.