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HYROXで多い怪我(ケガ)と予防|研究で多かった部位は膝・背中・下腿
HYROX(ハイロックス)の怪我(ケガ)で最も多く報告されている部位は膝で、HYROXの選手を調べた2026年の2つの研究のどちらでもケガの約2割を占めました。多くは練習を重ねるうちに徐々に出る「使いすぎ」です。部位ごとの数字、ケガが起きた場面、練習の頻度との関係を研究から整理し、痛みの段階と整形外科を受診する目安を学会の公開情報からまとめました。予防法の効果は、どちらの研究でも確かめられていません。

HYROX(ハイロックス)の怪我(ケガ)で最も多く報告されている部位は膝です。HYROXの選手を調べた2026年の2つの研究では、どちらも膝がケガの約2割を占めました(22%と20.8%)。418人が答えたアンケートでは、背中、下腿(膝から下のすね・ふくらはぎ)、股関節が続きます。転倒のような急なケガよりも、練習を重ねるうちに徐々に出てくる「使いすぎ」が多く、どちらの研究でも半数を超えました。
この記事では、どの部位に、どんな場面でケガが出ているかを研究の数字で確かめたうえで、痛みが出たときに運動を続けられる段階と、整形外科にかかる目安を学会の公開情報から整理します。2つの研究はどちらも、予防法の効果を試していません。
根拠は、英国バース大学の研究者による査読済みの追跡研究、ミュンヘン工科大学の研究者による査読前のアンケート研究、日本整形外科スポーツ医学会と日本整形外科学会の公開情報、HYROXの公式ルールブック(2026/27シーズン)と日本大会の参加規約です。2026年10月4日時点の情報で、診断や治療の助言ではありません。痛みがあるときは医療機関で相談してください。
HYROXの研究で多かったケガの部位は膝・背中・下腿・股関節

HYROXの選手のケガを数えた研究は、2026年に2つ公開されています。対象も数え方も違うので、先に並べます。
追跡研究 | アンケート研究 | |
|---|---|---|
研究者 | 英国バース大学 | ミュンヘン工科大学 |
公開 | 2026年9月に査読のある学術誌に掲載 | 2026年8月にプレプリントとして公開(査読前) |
対象 | 選手89人(女性56人)。HYROX歴1年未満が55人(62%) | 選手418人。30の国と地域から参加し、ドイツが65.6%。平均37.4歳 |
調べ方 | 2025年12月〜2026年3月の12週間、毎週アンケートに回答 | 過去12か月を振り返って本人が申告 |
数えたケガ | 期間中に起きた63件 | 1人につき最も重かったケガ197件 |
追跡研究で最も多かった部位は膝で、63件のうち14件(22%)でした。股関節・鼠径(そけい)部が7件、足と骨盤・腰が6件ずつ、下腿・アキレス腱が5件、肘が4件です。アンケート研究でも膝が最も多く(41件・20.8%)、背中・脊柱が30件(15.2%)、下腿が27件(13.7%)、股関節・鼠径部が26件(13.2%)でした。
2つの研究の割合は直接比べられませんが、膝が最も多く、ケガが下半身に集まっている点は同じです。
肩と手のケガは、ほとんど報告されていません。追跡研究では肩が1件、手・指は急なケガと使いすぎが1件ずつでした。ただし、この研究の参加者は89人で、多くはHYROXを始めて1年未満です。経験の長い人や、もっと人数の多い集団でも同じかどうかは分かっていません。
HYROXがほかの高強度トレーニングより危険という証拠は今のところない
追跡研究では、練習1,000時間あたりのケガは14.4件でした。練習を休まなかった軽いものも含めた数で、1日以上練習を休んだケガに限ると6.4件です。ケガの3分の2は本人がHYROXの練習が原因だと答えたもので、こちらは9.6件でした。
論文は、数え方が広いほど件数は増えるので、ほかの研究の数字とそのまま比べることはできないと説明しています。「HYROXの練習が原因で、練習を休んだケガ」に絞ると1,000時間あたり4.3件で、クロスフィットのような高強度の機能的トレーニングをまとめた先行研究の推定(3.2件)とおおむね同じ水準でした。ただし、2つの数え方は完全には同じではありません。この研究が数えたのは練習を1日以上休んだケガで、先行研究の3.2件は「3日以上練習を離れた」「3日以上練習内容を変えた」「医療の対応を受けた」のどれかに当てはまるケガです。
論文はこの比較から、HYROXがほかの高強度の機能的トレーニングより危険には見えないと読んでいます。同時に、走ることと筋トレを疲れた状態で続ける影響はまだ確かめられておらず、ほかの運動との比較に決着をつけるには、もっと大きな集団をケガの定義をそろえて調べる必要があるとしています。この研究の対象は89人で、多くはHYROXを始めて1年未満でした。
ケガをした人の割合で見ると、アンケート研究では、過去12か月にHYROXに関連したケガを1回以上した人が418人のうち208人(49.8%)でした。部位や起き方の集計に使われた197件は、この208人のうち、最も重かったケガの内容について情報があった197人の分です。追跡研究では、週ごとに見て、何らかの健康問題を抱えていた人が30%、練習や競技に大きく影響していた人が18%です。この研究の「健康問題」は、ケガだけでなく病気も含みます。
HYROXのケガの多くは使いすぎで徐々に出る
追跡研究では、ケガの73%が使いすぎ(徐々に出てくるもの)でした。膝の14件では71%、下腿・アキレス腱の5件ではすべてが、徐々に出たものです。
アンケート研究でも、起き方は「徐々に」が57.4%、「徐々にと急にの両方」が22.3%、「急に」が20.3%でした。ケガの種類は腱の不調が41.6%で最も多く、筋肉の損傷(19.8%)、靭帯・関節(13.2%)が続きます。
使いすぎのケガは、休まずに練習を続けられてしまいます。追跡研究では、健康問題があった週の約半分で、症状があっても練習が続けられていました。膝の14件のうち9件は、練習を1日も休んでいません。論文は、休んだ日数だけで数えるとケガの負担を小さく見積もってしまうと述べています。
長引く例もあります。アンケート研究では、重さの情報がある人の20.3%が、28日を超えて練習を中断したか、以前の力に戻れていませんでした。追跡研究の下腿・アキレス腱は5件と少ないものの、1件あたりの重さは全部位で最大でした。
レースや強い練習のあとの筋肉痛は別の話で、HYROXのあとの筋肉痛と回復にまとめています。
ケガが起きた場面とHYROX専用の練習・大会で原因に挙がった動き
アンケート研究で、ケガが起きた場面の情報があった205件を見ると、持久系の練習中が30.2%、HYROX専用の練習中が28.3%、筋トレ中が10.2%で、大会中は8.8%でした。ケガの多くは、大会当日ではなくふだんの練習で起きています。
HYROX専用の練習中か大会中に起きた76件では、69.7%で原因になった要素が挙げられました。最も多いのはラン(27.6%)で、次がサンドバッグランジ(11.8%)です。76件のうちの割合なので、サンドバッグランジは件数にすると約9件です。残りの30.3%は要素を特定できていません。追跡研究でも、原因の記録があった膝・下腿・足のケガは、走っているときのものが最多でした。ただし原因が記録されたのは63件のうち30件だけで、論文は探索的な比較だと断っています。
HYROXのランは1kmを8回、合計8kmです。サンドバッグランジは、シングルスとダブルスでは100mを進む種目で、1歩ごとに後ろ脚の膝を地面にはっきり着ける決まりがあります。どちらも脚に負荷がくり返しかかる動きですが、どの動きがどの部位のケガにつながるかまでは、2つの研究は示していません。膝の装具をレースで使えるかどうかはHYROXで膝サポーターは使える?にまとめています。
腰と背中は、脚とは傾向が違います。追跡研究の骨盤・腰のケガは6件(10%)で、半分は急に起きたものでした。原因の記録は筋トレ中が2件、種目中が1件で、論文は原因を1つに絞れないとしています。アンケート研究でも、筋トレ中のケガ(20件)は背中・脊柱が45%、急に起きたものが50%で、ランやHYROX専用の練習中のケガとは違う傾向でした。20件と少ないため、著者は仮説を立てるための集計だとしています。
腕では、追跡研究で肘のケガが4件あり、2件は長引きました。論文は、スレッドプル、ファーマーズキャリー、スキーエルゴ、ローイングのような、くり返し握って引く種目の負担と合うとしながら、少数の例に基づく仮説で、この競技の確立した特徴ではないとしています。
HYROX専用の練習の頻度が高い人ほどケガの報告が多い
アンケート研究では、年齢や性別などほかの要因の影響を除いてもケガの報告との関連が残った要因は、HYROXに特化した練習の頻度だけでした。頻度の区分が1段階上がるごとに、ケガを報告した人と報告しなかった人の比(オッズ)は1.61倍でした。誤差を見込んだ幅(95%信頼区間)は1.20〜2.16倍です。ケガを報告した人の割合で表した別の計算では、1段階ごとに1.24倍(同1.10〜1.40倍)でした。年齢・性別・BMIなど、ほかに測った要因には、こうした関連が出ていません。回答者の頻度は、週1〜2日が37.8%、週3〜4日が35.2%、週5日以上が20.3%でした。
この結果は「練習を増やすとケガをする」という意味ではありません。著者は、ある時点の回答を集めた研究なので因果は言えず、ケガをした人が練習を変えた可能性もあると明記しています。練習の処方は示せないとしたうえで、走ることと下肢への負荷まわりの使いすぎに注意を向けること、週あたりの頻度を含めた練習全体の負荷に目を向けることを挙げています。
過去のケガも、目印の候補として挙がっています。追跡研究では、89人のうち39人(44%)が、直近12か月に1日以上練習を休むケガをしていました。この39人は、そうでない人に比べて、期間中のケガの重さの累計が2.60倍という推定でしたが、信頼区間(1.00〜6.75)は「関係なし」も含みます。アンケート研究では、同じ部位に以前のケガや長引く痛みがあった例が29.4%ありました。追跡研究の論文は、最近のケガから戻る選手については、段階的に練習を戻し、こまめに様子を見るのが妥当だと述べています。
週の練習回数の組み方は週2回しか練習できない人のHYROXメニューにまとめています。
ケガの予防について研究と学会が示していること
2つの研究はどちらも、予防の方法を試していません。追跡研究は、ケガの負担がどこに集まったかをもとに、今後確かめる価値のある「目標の候補」を部位ごとに挙げています。
部位 | 論文が挙げた目標の候補(効果は未検証) |
|---|---|
膝 | 走る量の増やし方。練習を休むほどではない膝の症状を、ふだんから尋ねること |
下腿・アキレス腱 | ふくらはぎとアキレス腱の、負荷への強さ。走る量の増やし方 |
足 | 走る量の増やし方 |
肘 | 引く・運ぶ種目に向けた、握力と肘の耐久力 |
股関節・鼠径部、骨盤・腰 | 原因が混ざっていて、特定の目標は示されていない |
論文は、これらは1つの集団の記述から導いた候補で、どれも効果は確かめられていないと断っています。複数の部位に出てくるのは「走る量の増やし方」です。
使いすぎのケガそのものについては、日本の整形外科の学会が一般向けの説明を公開しています。HYROXに限った内容ではありません。
日本整形外科スポーツ医学会は、ランニングやジャンプを長時間くり返すことで膝に痛みが出る状態を「膝の慢性障害」と呼び、使いすぎ症候群とも説明しています。例として、ジャンパー膝、鵞足炎(がそくえん)、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)を挙げています。学会が挙げる要因は次のとおりです。
学会が挙げる要因 | |
|---|---|
選手の側 | 筋力不足、筋力のアンバランス、柔軟性の不足、アライメント不良(過度のO脚・X脚など) |
練習・環境の側 | オーバートレーニング、体力や技術に合わない練習、不適切な靴、硬すぎる・軟らかすぎる練習場 |
練習・環境の側の要因は、自分で見直せます。練習の量と内容が今の体力や技術に合っているか、靴が足に合っているか、いつも走る場所が硬すぎたり軟らかすぎたりしないか、です。靴の仕様はHYROXのシューズの選び方で比べています。
足については、日本整形外科学会が「足の慢性障害」(足底腱膜炎など)のページで、ランニングやジャンプの多い競技に多いと説明しています。予防として挙げているのは、足とふくらはぎのストレッチ、運動後のアイシング、足に合った靴、足底装具です。発症したら、練習量を減らすか一定期間休むとしています。このページにアキレス腱についての記述はありません。
運動前の準備については、日本スポーツ振興センター(JSC)のコラムが、ウォーミングアップの効果の1つにケガのリスクの軽減を挙げています。順番とやり方はHYROX当日のウォームアップにあります。
膝の痛みの段階と腰痛ですみやかに受診する症状

日本整形外科スポーツ医学会は、膝の慢性障害の重さを4段階に分けています。
段階 | 状態 |
|---|---|
軽症 | 運動はできるが、あとで痛む |
中等症 | 運動の途中とあとで痛むが、プレーに支障はない |
重症 | いつも痛く、プレーに支障が出る |
最重症 | 腱や靭帯が切れる |
学会は、軽症か中等症であればスポーツを続けられるとし、適切なコンディショニングでそれ以上悪化させないことが大切だとしています。運動の前に十分なストレッチを行い、運動のあとに15分ほどアイシングをすることも挙げています。
追跡研究では、膝のケガ14件のうち9件が、練習を休まないまま続いていました。練習を続けられることと、悪化しないことは別です。学会は発生要因に、オーバートレーニングや不適切な靴を挙げています。続けられる段階のうちは、練習の量や靴が見直しの手がかりになります。いつも痛い、動きに支障が出るという状態は、学会の区分では重症にあたります。この状態のときや、自分がどの段階か分からないとき、痛みが続くときは、整形外科で相談してください。
腰の痛みについて、日本整形外科学会は、次のどれかを伴う場合は放置したり自分で対処したりせず、すみやかに整形外科を受診するよう求めています。
- 安静にしていても軽くならない
- しだいに悪化する
- 発熱している
- 脚がしびれる、または力が入らない
- 尿漏れがある
同じページで学会は、腰痛で日常生活が制限されると体力と腰を支える筋力が落ち、さらに腰痛が起きやすくなると説明しています。一人ひとりに合う運動や体操は、整形外科で相談するよう勧めています。
友達やパートナーと出るときにケガについて確かめること
追跡研究が膝について挙げた目標の候補に、「練習を休むほどではない膝の症状を、ふだんから尋ねること」がありました。膝のケガの多くが、練習を休まないまま続いていたためです。一緒に練習する相手がいるなら、練習の前に「痛いところはないか」を聞き合うことが、この候補にそのまま当てはまります。効果が確かめられた方法ではありませんが、道具も時間も要りません。
出る形式を決めるときは、1人あたりの走る量と種目の量の違いも材料になります。
形式 | 1人あたりの走る量 | 種目 |
|---|---|---|
シングルス | 1kmを8回(合計8km) | 8種目を1人で行う |
ダブルス | 2人とも1kmを8回。必ず一緒に走る | 2人で交代しながら行う。分け方は自分たちで決める |
リレー | 1kmを2回 | 1人が2種目を担当。担当はチームで決める |
ダブルスは、種目を2人で分けられますが、ランは2人とも全区間を一緒に走ります。片方が先に行くと1分のペナルティです。脚に不安がある人にとって、ダブルスは種目の量を減らせても、走る量はシングルスと変わりません。リレーは4人で組み、1人がランを2本と種目を2つ担当します。どのランとどの種目を誰が担当するかは、チームで決められます。分担の決め方はダブルスのルールと分担の決め方とリレーの走順と担当の決め方にあります。
ケガをしたまま出る場合の決まりも確かめておきます。公式ルールブックは、ケガをしている参加者に、資格のある医療専門家から参加の許可を得ていることを自分の責任で確かめるよう求めています。動作や重さ・回数の調整が必要なときは事前にHYROXチームへ連絡しますが、調整して出た場合の結果は「アウト・オブ・コンペティション」(公式ランキングの対象外)になり、完走タイムは記録されます。詳しくはHYROXの参加条件にあります。
日本大会の参加規約では、申し込んだあとのケガで出られなくなっても、返金を受ける権利はありません。追加オプションを付けた場合の返金と名義変更は返金・キャンセル・譲渡のルールにまとめています。
KEY TAKEAWAYS
- HYROXの選手を調べた2026年の2つの研究では、ケガが最も多い部位は膝でした(22%と20.8%)。アンケート研究では背中、下腿、股関節が続きます。追跡研究では、肩のケガは1件、手・指のケガは2件だけでした
- 多くは使いすぎで徐々に出るケガです(追跡研究で73%)。症状があっても約半分の週で練習が続けられていて、膝のケガは14件のうち9件が練習を休んでいませんでした
- ケガが起きた場面は、大会中(8.8%)よりふだんの練習が多く、HYROX専用の練習か大会中に起きた76件では、原因としてラン(27.6%)とサンドバッグランジ(11.8%)が多く挙げられました
- 予防法の効果はどちらの研究でも確かめられていません。論文が挙げる候補は走る量の増やし方などで、学会は練習量・靴・練習場といった要因を挙げています
- いつも痛い、動きに支障が出る、痛みが続くときは整形外科で相談してください。腰痛で、安静にしても軽くならない・悪化する・発熱・脚のしびれや脱力・尿漏れのどれかを伴う場合は、すみやかな受診が求められています
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