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トレーニング · 17 MIN READ

ゾーン2トレーニングとは?心拍数の目安と時間・頻度|HYROXのランの土台づくり

ゾーン2トレーニングは、会話ができる強さで続ける有酸素運動で、心拍数では最大心拍数の60〜70%にあたります。30歳なら1分間に114〜133拍が目安です。年齢別の心拍数の早見表、1回の時間と頻度、時計の数字が計算と違う理由、研究で確かめられている効果の範囲を整理し、HYROX(ハイロックス)のランの練習での使い方をまとめました。

ゾーン2トレーニングとは?心拍数の目安と時間・頻度|HYROXのランの土台づくり

ゾーン2トレーニングは、会話ができる強さを保って続ける有酸素運動です。心拍数では最大心拍数の60〜70%にあたり、最大心拍数を「220-年齢」で出すと、30歳なら1分間に114〜133拍です。時間と頻度の目安は、1回30〜60分を週2〜3回です。これは海外のトレーニングガイドのHybrid Pro Coachの数字です。走る習慣が無い人は、同サイトが筋トレ経験者向けに示す20〜30分・週2回が始め方の目安になります。数字はガイドによって違い、週1回から始める案や、60〜90分を週1〜2回とする案もあります。

HYROX(ハイロックス)のレースは、1kmのランと種目を8回繰り返し、ランは合計8kmです。海外のトレーニングガイドは、このランの土台として、週のランの6〜8割を、ゾーン2を中心とした楽な強さで走るよう勧めています。この記事では、年齢別の心拍数の早見表、時計に出る数字が計算と違う理由、時間と頻度の目安をまとめます。「ゾーン2」という言葉は、時計やトレーニングガイドと研究とで指す強さが違うので、その違いと、研究の抄録(論文の要旨)で確かめられる効果の範囲も整理します。

根拠にしたのは、Garminの時計(Forerunner 265シリーズ)の操作マニュアルと健康長寿ネット「心拍数と運動強度」(どちらも2026年10月9日確認)、PubMedの研究の抄録7本(2026年10月上旬に取得)、海外のHYROXのトレーニングガイドです。研究はどれもHYROXの参加者を調べたものではありません。この記事は医療的な助言ではありません。持病や服薬がある場合は、運動を始める前に主治医に相談してください。

01

ゾーン2トレーニングは会話ができる強さで続ける有酸素運動

心拍ゾーンは、運動の強さを心拍数で段階に分けたものです。Garminの時計(Forerunner 265シリーズ)の操作マニュアルによると、心拍ゾーンは一般的に、最大心拍数に対する割合で5つに分けられます。同じマニュアルの参考表と、トレーニングアプリのCentrのガイドは、5つのゾーンを次のように説明しています。

ゾーン

最大心拍数に対する割合

呼吸と会話の様子(Garmin)

話せる量(Centr)

1

50〜60%

楽なペース。呼吸はリズムよく続く

歌える

2

60〜70%

快適に感じるペース。呼吸は少し深くなるが、会話はできる

会話ができる

3

70〜80%

マラソンを走るような標準のペース。会話を続けにくい

短い文でしか話せない

4

80〜90%

ややきついペース。呼吸が力強くなる

数語だけ話せる

5

90〜100%

長くは保てない全速力。呼吸がかなりきつい

息が切れる

ゾーン2は下から2番目の強さです。Garminのマニュアルは、このゾーンの効果を「心肺機能向上の基本となるトレーニング」で「回復に適したペース」と説明しています。HYROXの海外トレーニングガイド5社(Hybrid Pro Coach、Hyrox Vault、Gymshark、Centr、HyroxDataLab)も、ゾーン2を最大心拍数の60〜70%、会話ができる強さとしていて、区切り方は同じです。

ランニングでは、楽なラン(イージーラン)とロングランがこの強さにあたります。走る速さは、1kmあたり何分という形では決まっていません。この記事で確かめた範囲では、海外のトレーニングガイド(Hybrid Pro Coach、Hyrox Vault、Centr、Gymshark、HyroxDataLab、Find Your Edge)も、ゾーン2の速さを1kmあたりのペースでは示さず、心拍数か、走りながら話せる量で示しています。楽なランやロングランに付けている心拍数は、60〜70%と少し違うガイドもあります。Find Your Edgeは楽なランを最大心拍数の75%未満、Hyrox Vaultは90〜120分のロングランを最大心拍数の約70%としています。自分のゾーン2を知るには、心拍数を計算するか、会話が続けられるかを確かめます。

02

ゾーン2の心拍数の出し方と年齢別の早見表

年齢別のゾーン2の心拍数(最大心拍数の60〜70%)を帯で示した図。最大心拍数を「220-年齢」で出した場合は、20歳が120〜140拍、30歳が114〜133拍、40歳が108〜126拍、50歳が102〜119拍、60歳が96〜112拍。「208-0.7×年齢」で出した場合は、20歳が116〜136拍、30歳が112〜131拍、40歳が108〜126拍、50歳が104〜121拍、60歳が100〜116拍
式の出典:健康長寿ネット「心拍数と運動強度」、Tanakaほか(2001年)の抄録(2026年10月9日確認)。計算は編集部で、小数は四捨五入

ゾーン2の心拍数は、2つの手順で出せます。

  • 手順1: 最大心拍数を出します。一般的に使われる式は「220-年齢」です
  • 手順2: 最大心拍数に0.6と0.7を掛けます。2つの数字の間がゾーン2です

30歳なら最大心拍数は190拍で、ゾーン2は114〜133拍です。

最大心拍数の式は2つあります。「220-年齢」は、健康長寿ネットが一般的な式として紹介し、GarminのForerunner 265シリーズも最大心拍数の推定値に使っています。もう1つの「208-0.7×年齢」は、Tanakaらが2001年に発表した式です。351本の研究(18,712人)のデータをまとめて作られ、514人の健康な人を実際に測った実験でも、ほぼ同じ式(209-0.7×年齢)になりました。この研究の抄録は、最大心拍数は年齢でほぼ決まり、性別や普段の運動量には左右されないと述べています。「220-年齢」については、高齢者の最大心拍数を低く見積もるとしています。

2つの式で計算したゾーン2は次のとおりです。単位は1分間の拍数です。

年齢

「220-年齢」の最大心拍数

ゾーン2(60〜70%)

「208-0.7×年齢」の最大心拍数

ゾーン2(60〜70%)

20歳

200

120〜140

194

116〜136

25歳

195

117〜137

190.5

114〜133

30歳

190

114〜133

187

112〜131

35歳

185

111〜130

183.5

110〜128

40歳

180

108〜126

180

108〜126

45歳

175

105〜123

176.5

106〜124

50歳

170

102〜119

173

104〜121

55歳

165

99〜116

169.5

102〜119

60歳

160

96〜112

166

100〜116

表は編集部の計算で、小数は四捨五入しています。2つの式で出したゾーン2の差は、20〜60歳では上限も下限も0〜4拍です。40歳で同じ値になり、それより若い人は「220-年齢」のほうが高く、年上の人は「208-0.7×年齢」のほうが高く出ます。どちらの式を使っても、ゾーン2の範囲はほとんど変わりません。

式で出した最大心拍数は実際とずれることがある

式の値は年齢だけから出した目安で、実際の最大心拍数は人によって違います。健康長寿ネットは、心拍数には個人差があると書いています。HyroxDataLabは「220-年齢」を大まかな見積もりとし、Hyrox Vaultは、式の値が実際の最大心拍数とずれている人では、ゾーン2のつもりの強さが実際にはゾーン3になることがあると注意しています。

実際の最大心拍数を知る方法は、2つ挙げられています。

  • 施設で測る: Garminのマニュアルは、ジムや専門の医療機関が最大心拍数を計測するテストを行っていることがあると案内しています。HyroxDataLabは、検査施設でのテストを最も正確な方法としたうえで、ほとんどの人には要らないとしています
  • 自分で測る: HyroxDataLabは、ウォームアップのあと上り坂を4分間全力で走り、終わりの心拍数を最大心拍数の目安にする方法を挙げています

上り坂のテストは、全力を出しきる方法です。健康長寿ネットは、持病や服薬がある場合は運動を始める前に主治医へ相談するよう案内しています。

心拍数を測る道具について、HyroxDataLabは、手首で測る時計より胸に巻く心拍計のほうが正確だとしています。時計の機能の違いはHYROXで使う時計の選び方にまとめています。

時計に出るゾーン2が計算と違うときは基準の設定を確かめる

時計に表示されるゾーン2が、上の表と違う数字になることがあります。理由の1つは、ゾーンを決める基準の設定です。GarminのForerunner 265シリーズでは、基準を次の4つから選べます。ほかの機種は、それぞれのマニュアルで確かめてください。

  • bpm: 1分間の拍数で決めます
  • %Max: 最大心拍数に対する割合で決めます
  • %HRR: 心拍予備量に対する割合で決めます。心拍予備量は、最大心拍数から安静時心拍数を引いた値です
  • %LTHR: 乳酸閾値心拍数に対する割合で決めます

最初の設定では、最大心拍数を基にゾーンが自動で決まります。この記事の「60〜70%」も、最大心拍数に対する割合です。

基準が違うと、同じ「60〜70%」でも拍数が変わります。心拍予備量を使う計算はカルボーネン法と呼ばれ、「心拍予備量×割合+安静時心拍数」で拍数を出します。30歳(最大心拍数190拍)で安静時心拍数が60拍の人は、心拍予備量が130拍で、その60〜70%は138〜151拍です。最大心拍数の60〜70%(114〜133拍)より18〜24拍高くなります。

この数字は、計算の仕組みを示す例です。基準を%HRRにしたときに時計がゾーン2を何%から何%にするかは、今回確かめたマニュアルのページには書かれていません。実際の範囲は、時計の設定画面で確かめます。

ほかの記事やアプリの数字と比べるときは、最大心拍数に対する割合か、心拍予備量に対する割合かを先に確かめます。

心拍計が無いときは会話が続けられるかで確かめる

心拍計が無くても、ゾーン2かどうかは確かめられます。走りながら会話が続けられれば、ゾーン2の強さです。HyroxDataLabとCentrは、ゾーン2を会話ができる強さとし、それより強くなると短い文でしか話せなくなると説明しています。筋トレ経験者向けの2社のガイドも、会話ができないほど速いならペースを落とすよう書いています。

話せるかどうかで強さを見る方法は「トークテスト」と呼ばれ、研究でも調べられています。2022年の系統的レビュー(10件の研究・414人)は、楽に話せる最後の段階の心拍数や酸素摂取量が、第1換気性閾値の値と差がなかったと報告しています。第1換気性閾値は、運動を強くしていったときに、呼吸の増え方が最初に変わる強さの目印です。ただし、対象は主に心臓の病気がある患者で、運動習慣のある健康な人ではありません。レビューは、信頼性を十分に分析した研究が1件だけだったことと、決まった手順がまだ無いことも書いています。

心拍数で強さを決める人も、会話が続くかをあわせて確かめると、式のずれに気づけます。心拍数が計算の範囲に入っていても会話が続かないなら、速度を落とします。

03

ゾーン2トレーニングの時間と頻度の目安

時間と頻度は、今どれくらい走っているかで変わります。海外のトレーニングガイドの数字は、次の表のとおりです。数字はガイドによって違うので、どのガイドの数字かを表の下に書きます。

今の状態

1回の時間

頻度

進め方

走る習慣がほとんど無い

20〜30分

週2回

会話ができる速さで走る。走りと歩きを交互に行う形から始める進め方もある。数週間かけて時間と回数を伸ばす

走る習慣がある

30〜60分

週2〜3回

「あと15分続けられる」と感じるところで終える

長く走る日を足す(ロングラン)

60〜90分

週1〜2回

今走れる長さから始め、2〜3週間ごとに5〜10分足す

1行目は、Hybrid Pro Coachの筋トレ経験者向けのガイドの数字です。同サイトは、会話ができる速さで20〜30分を週2回走るところから始め、12週間かけて週3回、いちばん長いランを45〜60分まで伸ばす計画を示しています。同じく筋トレ経験者向けのSWOL Mindsetは、会話ができる強さの楽なランを週1回・30〜60分から始めるとしていて、数字はガイドによって違います。走りと歩きを交互に行う形は、Hyrox Vaultの進め方です。同サイトは、ほとんど走っていない人が4週目までに30分続けて走れるようにする計画を示し、初日から5km走ろうとしないよう注意しています。3社に共通しているのは、楽な強さのランから始めて、時間を少しずつ伸ばす進め方です。筋トレ中心の人の進め方は筋トレ派がHYROXに出るにはにまとめています。

2行目は、Hybrid Pro Coachの目安です。Hyrox Vaultのワークアウト集は45〜60分、Find Your Edgeは30〜40分としていて、どちらも30〜60分の範囲に入ります。Hyrox Vaultは、終えるときの感覚を「あと15分続けられる」くらい、主観のきつさを10段階の3〜4としています。

3行目は、HyroxDataLabの目安です。同サイトは、ゾーン2の練習を1回60〜90分、HYROX向けに週1〜2回としています。同サイトの1週間の例では、ゾーン2のロングランは月曜の1回です。90分走れない人は今走れる長さ(例として40分)から始めるよう勧め、マラソンの練習ではないので90分を超えないように書いています。Hyrox Vaultのロングランも60〜90分ですが、週に50〜70km走る人向けの1週間の例には、90〜120分のロングランも入っています。ガイドごとの楽なランとロングランの数字は、HYROXのランニング練習メニューに表で並べています。

よくある失敗は、速く走りすぎることです。HyroxDataLabは、会話が続けられないならゾーン3に入っているとし、速度を落とすよう書いています。

健康づくりのための運動量には、別の目安があります。米国スポーツ医学会(ACSM)は2011年の公式見解で、ほとんどの成人に、中強度の有酸素運動を1日30分以上・週5日以上(合計で週150分以上)、または高強度の有酸素運動を1日20分以上・週3日以上(週75分以上)行うよう勧めています。抄録には「中強度」が心拍数の何%にあたるかは書かれておらず、ゾーン2と同じ強さかは確かめられていません。Hybrid Pro Coachの目安どおりにゾーン2を30〜60分・週2〜3回行うと、合計は週60〜180分です。

週のランの6〜8割をゾーン2にあてる

トレーニングガイドは、週のランの大半を楽な強さで走るよう勧めています。Hybrid Pro Coachは週のランの量の60〜70%を、HyroxDataLabは80%をゾーン2にあてます。Hyrox Vaultは、楽なゾーン1〜2をおよそ8割にします。残りは、テンポ走やインターバルなどの速いランです。Hyrox Vaultは、毎回きつく練習して疲れをため、有酸素の土台を作れないことを、アマチュアのいちばん大きな練習の失敗に挙げています。

スキーエルゴや自転車でも行える

ゾーン2の練習は、ランニングに限りません。Concept2は、スキーエルゴの練習メニューとして、最大心拍数の60〜70%で45分続ける「ロンググラインド」を挙げています。ワット数かスプリットを見て、強さを一定に保ちます。SWOL Mindsetは、休養日に入れる楽な有酸素運動として、30〜45分のラン・自転車・ローイングを並べています。Polarの読み物も、走らない人は持久系の練習をローイングマシン・スキーエルゴ・自転車に替えられるとしています。Concept2のほかのメニューはスキーエルゴの効果と使う筋肉で紹介しています。

ここからは編集部の整理です。HYROXでは合計8kmを走るので、ゾーン2の一部をほかの器具に替える場合も、走る練習は別に続けます。

04

「ゾーン2」という言葉が指す強さは場面によって違う

「ゾーン2」という言葉が指す強さを、使われる場面ごとに並べたカード図。時計とトレーニングガイドでは、最大心拍数で分ける5段階のうち最大心拍数の60〜70%で、会話ができる楽な強さ。持久系の研究では、2つの閾値で分ける3段階のうち2つの閾値の間で、テンポ走などの強さを指し、楽な強さはゾーン1と呼ぶ。2025年のレビューは、乳酸性作業閾値より下の低強度の運動と定義し、心拍数の割合では決めていない
出典:Garminの操作マニュアル(Forerunner 265シリーズ)、PubMedの抄録3本(2026年10月9日確認)

「ゾーン2」は、使われる場面によって指す強さが違います。数字や研究の結果を読むときは、どの意味のゾーン2かを先に確かめます。

  • 時計とトレーニングガイド: 最大心拍数で分ける5段階の、下から2番目です。最大心拍数の60〜70%で、会話ができる楽な強さを指します。この記事のゾーン2はこの意味です
  • 持久系の研究: 2つの閾値で強さを3段階に分けます。ゾーン1が第1の閾値以下、ゾーン2が2つの閾値の間、ゾーン3が第2の閾値より上です。楽な強さはゾーン1と呼ばれ、ゾーン2はテンポ走などの、それより強い練習を指します
  • 2025年のレビュー: 一般向けに広まったゾーン2の説明を検討した論文で、ゾーン2トレーニングを「乳酸性作業閾値より下の低強度の運動」と定義しています。心拍数の割合では決めていません

閾値は、運動を強くしていくと呼吸や血中の乳酸の増え方が変わる境目です。研究では、低い側と高い側の2つを使います。

3段階の分け方は、トップレベルの長距離ランナーの練習を調べた2022年の系統的レビュー(論文10本)で使われています。このレビューでは、ゾーン2は血中の乳酸が2〜4mmol/Lにあたる2つの閾値の間です。ジュニアのクロスカントリースキー選手11人の練習を調べたSeilerらの研究(2006年)も同じ分け方で、持久系の練習のうちゾーン1が約75%、ゾーン2が約8%、ゾーン3が約17%でした。

この「ゾーン2は約8%」を、時計のゾーン2(会話ができる強さ)の練習が少ないという意味に読むと、結論が逆になります。3段階の分け方では、楽な強さの練習はゾーン1に数えられています。

最大心拍数の60〜70%が乳酸の閾値より下にあたるかどうかを示した資料は、今回確かめた中にはありませんでした。5段階のゾーン2と、閾値で決めるゾーン2が同じ強さになるとは限りません。

05

ゾーン2の効果について研究の抄録で確かめられること

ゾーン2は、ミトコンドリアの能力と、脂肪をエネルギーとして使う能力を高めるのに最適な強度だと紹介されることがあります。2025年にSports Medicine誌に載ったレビューは、この説明が一般の人への勧めとして適切かを検討し、次のように結論しています。

  • 今ある研究は、ゾーン2がミトコンドリアの能力や脂肪酸を酸化する能力を高めるのに最適な強度だという説明を支持していません
  • 心臓や代謝の健康への効果を大きくするには、ゾーン2より高い強度を優先することが重要です。運動量が少ない場合は、特に重要だとしています
  • ゾーン2を勧める説明の多くは、大量のゾーン2を行うエリートの持久系選手の観察データがもとになっています

結論は「最適な強度とは言えない」で、効果が無いという内容ではありません。このレビューは、文献を系統的に集める形式ではないレビュー(ナラティブレビュー)で、対象は一般の人です。

持久系の競技選手の練習に低い強度が多いことは、別の研究でも報告されています。Seilerらの研究(2006年)では、ジュニアのスキー選手の持久系の練習の約75%が、第1の閾値以下の強さでした。2022年の系統的レビューも、トップレベルの長距離ランナーの練習は、低い強度がいちばん多く、強度が上がるほど量が減るピラミッド型が多いと報告しています。同じレビューによると、エリートのランナーは、第2の閾値付近のテンポ走やインターバルと、それより上の強さの練習を、それぞれ少なくとも週1回行っていました。低い強度だけで練習しているわけではありません。

強さの違いを直接比べた実験もあります。Helgerudらの研究(2007年)は、中程度に鍛えた健康な男性40人を4つのグループに分け、運動の総量と頻度(週3日・8週間)をそろえて比べました。最大酸素摂取量の増加は、最大心拍数の90〜95%で4分走るのを4本繰り返すグループが7.2%、15秒走って15秒軽く動くのを繰り返すグループが5.5%で、最大心拍数の70%でゆっくり長く走るグループや、85%の強さで走るグループより有意に大きい結果でした。

4本の抄録から言えるのは、次の範囲です。

  • ジュニアのスキー選手の持久系の練習は、約75%が低い強度でした。トップレベルの長距離ランナーも、低い強度の量がいちばん多い型が多いと報告されています
  • 運動の総量をそろえた8週間の実験では、最大酸素摂取量は、最大心拍数の70%や85%で走るグループより、90〜95%のインターバルを行ったグループのほうが伸びました。この結果は最大酸素摂取量についてのもので、対象は中程度に鍛えた男性です
  • ゾーン2が、ミトコンドリアや脂肪を使う能力を高めるのに最適な強度だとは言えません

次の点は、今回確かめた抄録からは分かりません。

  • ゾーン2の練習でHYROXのタイムが縮むか。どの研究も、HYROXの参加者や、種目を挟んで走る条件を調べていません
  • ゾーン2が体重や体脂肪を減らすのに向いているか。2025年のレビューが検討したのは、ミトコンドリアと脂肪を使う能力、心肺の体力です
  • 運動を始めたばかりの人や女性でも同じ結果になるか。Helgerudらの研究とSeilerらの研究の対象は男性だけです
  • 論文の本文に書かれている細かい条件。確かめたのは抄録だけです

ここからは編集部の整理です。研究の結果は、大半を楽な強さで走り、一部を高い強度で走るというトレーニングガイドの組み方と矛盾しません。ゾーン2を有酸素の土台と位置づけているのはトレーニングガイドで、今回の抄録はその役割を確かめていません。ゾーン2だけで持久力がいちばん伸びるという根拠も、今回の抄録にはありませんでした。

06

HYROXの練習でのゾーン2の位置づけ

HYROXのレースでは、1kmのランを8本走ります。1本目のほかの7本は、種目を終えた直後のランです。本番のランの強さについては、序盤をゾーン3(最大心拍数の70〜80%)で入り、終盤にかけてゾーン4(80〜90%)まで上げる目安を示すトレーニングガイドがあります。ゾーン2は本番より低い強さで、本番の速さそのものを練習するメニューとは別です。

トレーニングガイドがゾーン2に求めている役割は、ランの土台づくりです。練習は次の順で進めます。

  • 最初: 走る習慣が無い人は、ゾーン2のランを週1〜2回から始めます。1回の時間は、Hybrid Pro Coachが20〜30分(週2回)、SWOL Mindsetが30〜60分(週1回)としています
  • 次: 数週間かけて、時間と回数を伸ばします
  • その後: 土台ができたら、800m〜1kmのインターバルやテンポ走を週1回足します

HyroxDataLabの1週間の例(ラン3回と種目の練習2回)は、月曜にゾーン2のロングラン(60〜90分)、水曜にテンポ走、金曜に高強度のインターバルを置いています。火曜と土曜が種目の練習、日曜は休みです。RB100は、週の例で、月曜の低強度のランをトレッドミルで行う形にしています。トレッドミルの速度と傾斜の設定はHYROXのラン練習はトレッドミルでできる?にまとめています。

ゾーン2に足す練習は、ほかの記事で扱っています。種目の直後に走る練習はHYROXのコンプロマイズドランに、完走者が1kmを何分で走っているかはHYROXに必要な走力にまとめています。本番での心拍数の見方はHYROXの練習と本番で心拍数をどう使うか、週全体の回数と組み方はHYROXの練習は週何回?、初出場の人の全体の組み立てはHYROX初出場のための練習の組み立てで確認できます。

07

KEY TAKEAWAYS

  • ゾーン2トレーニングは、会話ができる強さで続ける有酸素運動です。時計やトレーニングガイドの5段階では、最大心拍数の60〜70%にあたります
  • 心拍数は、最大心拍数に0.6と0.7を掛けて出します。最大心拍数を「220-年齢」で出すと、30歳は114〜133拍、40歳は108〜126拍です。研究から作られた「208-0.7×年齢」を使っても、20〜60歳では差は0〜4拍です
  • 時計のゾーン2が計算と違うときは、基準の設定を確かめます。心拍予備量(%HRR)を基準に計算すると、同じ60〜70%でも拍数が高くなります
  • 時間と頻度の目安は、Hybrid Pro Coachが示す1回30〜60分・週2〜3回です。走る習慣が無い人は、同サイトが筋トレ経験者向けに示す20〜30分・週2回が始め方の目安になります。週1回から始めるガイドや、60〜90分を週1〜2回とするガイドもあります。トレーニングガイドは、週のランの6〜8割を楽な強さで走るよう勧めています
  • 研究の3段階の分け方では、「ゾーン2」は2つの閾値の間の強さを指します。時計のゾーン2とは別の強さです
  • 2025年のレビューは、ゾーン2がミトコンドリアや脂肪を使う能力を高めるのに最適な強度だとは言えないと結論しています。HYROXのタイムが縮むかを調べた研究は、今回確かめた中にはありませんでした
  • HYROXの本番のランは、ゾーン3〜4が目安です。トレーニングガイドはゾーン2を土台づくりの練習と位置づけ、土台ができたらインターバルやテンポ走を週1回足すよう勧めています
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