トレーニング · 10 MIN READ
HYROXのコンプロマイズドラン(種目のあとに走る練習)のやり方
種目の直後に走る練習「コンプロマイズドラン」を、海外のトレーニングガイドの練習例を並べて比べました。共通する基本の形と、記事ごとに違う走る強さ・休み方・頻度、器具が少ないジムやダブルスでの練習の仕方をまとめています。

HYROX(ハイロックス)のランは1kmが8本ありますが、疲れていない状態で走れるのは最初の1本だけです。残りの7本は、種目を終えた直後に走り出します。この「種目のあとに走る」状態に体を慣らす練習を、コンプロマイズドラン(英語のcompromised running。コンプロマイズドランニングとも)と呼びます。基本の形は、ランを400m〜1kmや3分ほどに短く切って種目と交互に行い、種目が終わったら休まずに走り出すことで、頻度は週1回前後を目安にするトレーニングガイドが多くなっています。
一方で、ランをどのくらいの強さで走るか(レースペースか心拍数か)や、ラウンドの間に休むかどうかは、記事によって違います。この記事では、海外のトレーニングガイド6件の練習例を並べて、共通している点と違う点を分けて示しました。本番の器具が少ないジムでの組み方と、ダブルスで出る2人の練習の仕方もまとめています。
根拠にしたのは、HYROX公式サイト・公式ルールブックと、BOXROX・Gymshark・Hyrox Vault・ROXFIT・Centr・Hybrid Athlete Clubなどの海外のトレーニングガイドです。いずれも2026年10月1日時点で確認した内容です。
コンプロマイズドランは種目の直後に走る練習
HYROXの公式ルールブックでは、レースは1kmのランのあとに1種目を行い、これを8回繰り返す構成と決まっています。最初のランだけはスタートしてすぐに走りますが、2本目からのランはすべて種目の直後です。英国でHYROXの練習プログラムを運営するHybrid Athlete Clubも、疲れていない状態で走れるのは1回だけで、残りの7本は種目の直後に走ると説明しています。
HYROX公式サイトも、脚と腕を使ったあとに走る感覚を練習のうちに経験しておくよう勧めています。スレッドプッシュを押したあとや、バーピーブロードジャンプで心拍が上がったあとに自分がどう走れるのかを、本番の前に確かめておくという考え方です。
トレーニングガイドが例に挙げるのは、スレッドプッシュやバーピーブロードジャンプ、サンドバッグランジのように脚を使う種目のあとに走る場面です。8種目の順番はHYROXの8種目と順番にまとめています。
種目のあとに走ると脚が重く感じる
種目の直後に走るとどう感じるかについて、トレーニングガイドの書き方はほぼ同じです。ROXFITは、脚が重く、心拍数はすでに高く、いつもの5kmのペースがどこにも見当たらないと書き、歩幅が縮み、呼吸が苦しいまま走り出すことになるとしています。Gymsharkの記事でも、完走経験のある参加者が「脚に重りを付けて走っているような感覚」と表現しています。
特につらいのは、走り出した直後です。ROXFITは、種目を終えてからの最初の200〜400mは遅く苦しく感じるものだと受け入れ、疲れていないときのペースに無理に戻そうとせず、リズムが戻るのを待つよう勧めています。Centrは、最初の100〜200mで呼吸を整える(3歩で吸って2歩で吐く)ことを勧めています。Hybrid Athlete Clubは、この脚の重さはずっと続くわけではなく、練習を重ねれば走っているうちに戻ってくると書いています。
コンプロマイズドランは、この走り出しの感覚を本番の前に何度も経験しておくための練習です。
トレーニングガイド6件の練習例を比べる
各記事の練習例を、ランの距離・組み合わせる種目・回数と休みで並べました。
記事 | ランの距離 | 組み合わせる種目 | 回数・休み |
|---|---|---|---|
Gymshark(例1) | 3分 | バーピーブロードジャンプ80m、ウォーキングランジ100m | 3回 |
Gymshark(例2) | 1km | ウォールボール20回、スキーエルゴ500m | 4回・休みは最小限 |
ROXFIT | 1km | ウォールボール50回(1km→50回→1km) | ― |
ROXFIT | 800m | スレッドプッシュ、ローイング | ― |
BOXROX | 1km | スキーエルゴ500m、スレッドプッシュ30m(中くらいの重さ)、ローイング500m | ― |
BOXROX | 400m | 重めのウォールボール15回、ランジ20回、ケトルベルデッドリフト20回のどれか | ― |
Hyrox Vault | 1km(レースペース) | ローイング500m、ウォールボール25回、ファーマーズキャリー100m、バーピーブロードジャンプ15回 | 4ラウンド・各ランのあと90秒休む |
TRX Training | 400m | 重めのゴブレットスクワット | ― |
compromisedrunning.com | 記載なし | スレッドプッシュ | 本番より短い距離にして20分間休まず繰り返す(初心者向け) |
compromisedrunning.com | 500m | バーピー20回、ランジ20回(次は19回ずつ減らし、1回まで) | ― |
共通しているのは、ランを400m〜1km(Gymsharkの例1は3分)に短く切り、本番の種目か脚を使う筋トレを終えたらすぐに走り出すこと、そしてランと種目を数回繰り返すことです。どの例も、8種目をすべて本番の形で通す組み方にはなっていません。8種目を本番の順番で通す練習はHYROXのシミュレーションのやり方にまとめています。
走る強さの目安は記事によって違う
いちばん違いが大きいのは、ランをどのくらいの強さで走るかです。
- レースペースで走る: BOXROXは目標のレースペースで行うよう勧め、Hyrox Vaultも1kmをレースペースで走るメニューにしています。Hyrox Vaultは、種目は滑らかにこなし、疲れた状態で質の高いランをすることを目的にするとしています
- 心拍数で決める: Centrは心拍ゾーンで強さを示し、コンプロマイズドランはゾーン4〜5(最大心拍数の80〜100%)で行う練習としています
- 疲れたときのペースを知る: ROXFITは、疲れていないときのペースで走ろうとすると心拍数がさらに上がり、結局ペースも落ちるとして、疲れた状態で続けられるペースを知ることを目的にしています。compromisedrunning.comも、HYROXのランは10kmを走るときのペースより遅くなるのが普通だとしています
どれが正しいかは、記事からは決められません。初めての大会で完走を目指す人は、ROXFITのように、まず種目のあとに自分のペースがどれだけ落ちるかを知ることから始めると、本番のペースを決める材料になります。目標タイムがあり、レースペースが決まっている人は、BOXROXやHyrox Vaultのように、そのペースで走れるかを確かめる使い方ができます。心拍ゾーンの決め方はHYROXの練習と本番で心拍数をどう使うかを参照してください。
ラウンドの間に休むかどうかも記事によって違う
どの記事も、種目が終わったら休まずに走り出す点は同じです。違うのは、ランと種目のひと組を終えたあとに休むかどうかです。
ROXFITはランと種目の切り替えの間に休みを入れないピラミッド形式を挙げ、Gymsharkは休みを最小限に、compromisedrunning.comの初心者向けの例は20分間休まずに続けます。compromisedrunning.comは、休まずに続けることで本番の疲れ方に近づけられると説明しています。一方、Hyrox Vaultは各ランのあとに90秒休み、1本ごとのランの質を保つことを優先しています。
前の節で選んだ目的に合わせると選びやすくなります。疲れたときのペースを知りたいなら休まずに続ける形、レースペースで走れるかを確かめたいなら休みを入れる形が、それぞれの記事の考え方に沿っています。
頻度は週1回前後が目安
頻度は、週1回前後を目安にする記事が中心です。TRX Training・STRIDE Fitness・RitFitは週1回を勧め、compromisedrunning.comは週1回で十分すぎるほどだとしています。レベル別に示している記事もあります。
記事 | 初めての人 | 慣れてきた人 | 上級者 |
|---|---|---|---|
BOXROX | 週1回 | 週1〜2回 | 練習の山場の時期に週2〜3回 |
Gymshark | 1〜2週に1回で十分 | 回復に応じて週1〜2回 | 回復に応じて週1〜2回 |
コンプロマイズドランは疲れが大きい練習です。compromisedrunning.comは毎日行うものではないとし、BOXROXも、回数が多すぎると疲れがたまりすぎたり、けがにつながったりすると注意しています。
始める時期は走る土台ができてから
いつから始めるかについて、Hybrid Athlete Clubは準備期間を3つの時期に分けています。まず走る量と筋力を増やす土台づくりの時期があり、大会の12〜16週前から始まる競技に合わせる時期に、土台づくりを終えていればコンプロマイズドランを週1回入れます。大会の1〜2か月前の時期は、本番に近い形の長めの練習を増やし、走るだけの練習と、練習の中にランを組み込むメニューをそれぞれ1〜2回入れるとしています。土台づくりを飛ばしていきなりコンプロマイズドランを始めると、崩れたフォームのまま走る癖がつくとしています。
Rox Lyfeも、コンプロマイズドランは大会が近づくほど重要になるとしています。ただし、コンプロマイズドランだけに切り替えるのではなく、ふつうのランの練習も続けるよう勧める記事が複数あります。Rox Lyfeはふつうのランの練習は引き続き欠かせないとし、Hybrid Athlete Clubはゆっくり長く走るラン(ゾーン2)・インターバル・目標ペースのランの3つを週に入れるよう勧めています。Centrも、イージーラン・ロングラン・インターバルとコンプロマイズドランを組み合わせています。

準備期間が8週間ほどの人に向けた練習全体の組み立てはHYROX初出場のための練習の組み立てにまとめています。
スレッドが無いジムでの組み方
コンプロマイズドランは、本番の種目の器具がそろっていなくても組めます。Gymsharkは、時間が無いときはラン以外のどの筋トレや有酸素運動の合間にランを挟んでもよいとしています(できれば本番の種目で行うよう勧めています)。TRX Trainingはゴブレットスクワットのあとすぐに400m、BOXROXはランジやケトルベルデッドリフトのあとに400mを走る例を挙げています。
脚の疲れがたまっている週は、compromisedrunning.comが挙げるように、バーピー・スキーエルゴ・ローイングとランを組み合わせて、脚への負担を抑えながら行う方法もあります。

本番の種目の代わりになる動きは、種目ごとに次の記事にまとめています。
器具がほとんど無い場合は自宅でできるHYROXの練習を参照してください。
ダブルスで出るなら2人で一緒に練習する
ダブルスのルールでは、2人は各1,000mの区間を必ず一緒に走り、種目にも2人そろって入ります。種目のあとに走り出すときも、2人で並んで走ることになります。友達やパートナーとダブルスで出るなら、コンプロマイズドランも2人で行い、種目のあとに2人で一緒に走れるペースを本番の前に確かめておくと安心です。
ペースの合わせ方や器具の交代の仕方はHYROXをペアで練習するメニュー、ダブルスのルールはHYROXダブルスのルールと分担にまとめています。
練習の効果は同じテストを繰り返して確かめる
コンプロマイズドランの効果を確かめる方法として、Hyrox Vaultは「Compromised Running Test」を挙げています。1kmを走り、ウォールボール100回(または自分で選んだ種目)をこなし、すぐにもう1回1kmを走る形で、種目の疲れからどれだけ立ち直れるかを測ります。Hyrox Vaultはこのテストを含む7種類のテストを挙げ、そのどれか1つを4〜6週間ごとに繰り返すと、練習の効果を正直に測れるとしています。
ROXFITは、初めて練習したときに疲れた状態のペースが思ったより遅いことに多くの人が驚くものの、それを大会の前に知っておくこと自体が役に立つとしています。時計でランごとの時間を記録しておくと、2回目以降と比べやすくなります。Garminの時計でランと種目を分けて記録する設定はGarminでHYROXを計測する設定にまとめています。
本番のペース配分はHYROXのペース配分とRoxzoneの動き方を参照してください。
KEY TAKEAWAYS
- HYROXの8本のランのうち、疲れていない状態で走れるのは1本目だけです。残り7本は種目の直後に走るため、その状態に慣れる練習がコンプロマイズドランです
- 基本の形は、400m〜1kmや3分ほどに短く切ったランと、本番の種目か脚を使う筋トレを交互に行い、種目を終えたら休まずに走り出すことです
- 走る強さの示し方は記事によって違います(レースペース・心拍ゾーン4〜5・疲れたときのペースを知る)。初めてなら、種目のあとに自分のペースがどれだけ落ちるかを知ることから始めると、本番のペースを決める材料になります
- ラウンドの間に休むかどうかも記事によって違います。休まない形は本番の疲れ方に近く、休む形は1本ごとのランの質を保ちやすくなります
- 頻度は週1回前後が目安で、初めての人は1〜2週に1回でよいとする記事もあります。ふつうのランの練習も続けます
- スレッドなどの器具が無くても、筋トレや有酸素運動の直後に400mほど走れば組めます
- ダブルスは2人で一緒に走るので、コンプロマイズドランも2人で行い、一緒に走れるペースを確かめておくと安心です
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