トレーニング · 8 MIN READ
HYROXのウォールボールの代用トレーニング|ボールや的が無いときにできる練習
ウォールボールの「しゃがむ」「脚で押し上げる」「頭上へ押し上げる」動きは、ボールや的が無くても代わりのトレーニングで練習できます。海外のトレーニングガイド5件を読み比べ、複数の記事が勧めている方法と、代用では補えない部分をまとめました。

ボールや的が無くても、HYROX(ハイロックス)のウォールボールに必要な「しゃがむ」「脚で押し上げる」「頭上へ押し上げる」動きは、代わりのトレーニングで練習できます。海外のトレーニング指導の記事5件を読み比べると、最も多い4件が勧めているのは、ダンベルやケトルベルを使ったスラスターでした。重い本や水を入れた容器でもできる、スクワットと頭上へのプレスを組み合わせる方法も3件が挙げています。
この記事は、スレッドプッシュの代用トレーニング・スレッドプルの代用トレーニング・スキーエルゴの代用トレーニングに続くシリーズです。ウォールボールでは、ボールを受ける・的に当てる・100回を同じリズムで続けるといった、ボールを使う部分を代用では再現できません。そこでウォールボールの動きを分けて、代用で補える部分と補えない部分を整理します。
手元にある物(ダンベル・家にある重い物・何も無い・ボールだけある)ごとに選べる方法と、大会前に本物のボールで練習する目安を、各記事が何を勧めているかとあわせて紹介します。重さと的の高さは、HYROX公式のルールブック(2026/27シーズン)に基づいています。
ウォールボールは最後の種目で、しゃがんで的に当てる動きを100回繰り返す
HYROXは8種目を1kmのランと交互に繰り返すレースで、ウォールボールは8番目、最後の種目です。ボールを両手で持って立った姿勢から、腰が膝より低い位置までしゃがみ、立ち上がる勢いで壁の的に投げ上げる動きを100回行います。
ボールの重さは部門によって4kg・6kg・9kgの3段階です。的の高さは部門ではなく投げる本人の性別で決まり、女性は2.70m、男性は3.00mです。しゃがみが浅い、的のストライクゾーンに当たらないといった動きはノーレップ(回数に数えない)になります。部門ごとの重さと判定の基準はウォールボールにまとめています。運動としての効果と使う筋肉はウォールボールの効果と使う筋肉にまとめています。
代用トレーニングで補えることと補えないこと
HYROXの情報サイトHyrox Vaultと、HYROX向けのトレーニングアプリRepzは、代用で再現できることと再現できないことを、それぞれ具体的に挙げています。
- 再現できること: しゃがむ深さ、脚で爆発的に押し上げる力、頭上での姿勢(Hyrox Vault)。スクワット、脚の押し上げ、頭上へのプレス、繰り返しの持久力、動きの協調(Repz)
- 再現できないこと: 胸の位置でボールを受けるリズム、次のしゃがみに沈むタイミング、本物のボールで100回投げることで肩にたまる疲れ(Hyrox Vault)。ボールの飛び方、キャッチ、的に当てること、審判の判定、正確なリズム(Repz)
Hyrox Vaultは、代用だけで練習してから本物のボールで100回投げると感覚が違うとしており、ウォールボールをスレッドプッシュ・ファーマーズキャリーと並んで「代用が完全ではない種目」に分類しています。Repzも、どの代用もウォールボールの1対1の置き換えとして証明されたものは無いとしています。
一方で、しゃがむ深さは代用でも練習できます。英国のスポーツウェアブランドGymsharkは、ルールを把握していないことで起きる単純なミスの例として、ウォールボールのしゃがみの深さ不足を挙げ、競技の基準を意識して練習するよう勧めています。Hyrox Vaultが挙げるゴブレットスクワットも、パラレルより深く(腰が膝より低い位置まで)しゃがむ動きです。代用のスクワットでも腰が膝より低い位置までしゃがんでおくと、本番の判定基準と同じ深さを体で覚えられます。
読み比べた5件は、Gymshark、Hyrox Vault、英国の個人トレーナーsimongPT、英国のジム機材メーカーRecharge Fitness、Repzです(Hyrox Vaultは同じサイトの3本の記事を1件として数えています)。それぞれが挙げている代用法を、何件が勧めているかで並べると次のようになります。

スラスターが5件のうち4件で最も多く、スクワットと頭上へのプレスを組み合わせる方法が3件で続きます。メディシンボールを床に叩きつける方法と、器具を使わずにスクワットから頭上へ手を伸ばす方法は、それぞれ2件が挙げています。
ダンベルやケトルベルがあるときの代用
スラスター
スラスターは、しゃがんだ姿勢から、立ち上がる勢いで重りを頭上へ押し上げる一続きの動きです。Gymshark・simongPT・Recharge Fitness・Repzの4件が挙げています。
Gymsharkは「メディシンボールが無ければ、ダンベルかケトルベルのスラスター(スクワット+プレス)がよい代用」としています。simongPTは「ウォールボールはスクワットとプレスの組み合わせなので、スラスターかダンベルのプッシュプレスが最もよい代用」とし、Recharge Fitnessは「ダンベルのスラスターは動きのパターンが近い」、Repzは選択肢の1つとして「ダンベルかバーベルのスラスター」を挙げています。
スクワットと頭上へのプレスを組み合わせる
Hyrox Vaultは、ボールと壁が無ければ、ウォールボールを2つの動きの要素に分けて再現する方法を挙げています。
- スクワットの要素: 重りを胸の高さに持ち、パラレルより深くしゃがむゴブレットスクワット
- 投げる動きの要素: しゃがんだ姿勢から立ち上がり、重りを頭上へ押し上げるプレス
この2つを続けて「ゴブレットスクワットから頭上へのプレス」を100回行う、というのがHyrox Vaultの方法です。重りはダンベルのほか、重い本や水を入れた容器でもよく、同じサイトの別の記事では重いリュックなど重さのある物なら何でもよいとしています。ダンベルが無くても、家にある物で始められます。
同じように、Recharge Fitnessは「手元の重さのある物を使ったスクワット+プレス」を、Repzは「ゴブレットスクワットからのプッシュプレス」と「片手でのスクワットからのプレス」を挙げています。RechargeとRepzは、どちらもスラスターとは別の選択肢として挙げています。
器具が何も無いとき(旅行先のホテルなど)の代用
器具を使わない代用として、Repzは「手を伸ばしながら行う、制御したスクワットジャンプ」を挙げています。Hyrox Vaultは、出張や旅行の間にホテルの部屋でできる器具なしのメニューの中で、ウォールボールの代わりに「スクワットから頭上へ手を伸ばす動き」を50回行うとしています。
Hyrox Vaultは、ホテルの部屋での練習の目的を、新たに体力を伸ばすことではなく、それまでに積んだ体力を保つことだとしています。1〜7日の旅行を想定し、5日間の旅行なら1日おきに25分のセッションを行えば、それまでの練習の効果をほぼ保てるという考え方です。大会の遠征や旅行と練習期間が重なるときの参考になります。遠征の日程の組み方はHYROXの遠征旅行ガイドにまとめています。
ボールはあるが、壁や的が無いときの代用
ボールはあっても、投げ上げる壁や的が無い場合の考え方は、記事によって分かれています。
- 自分で高さの印を付ける(Recharge Fitness): 自宅ならボールと頑丈な壁(ガレージの壁や屋外の壁)があればよく、的を買って壁に取り付ける代わりに、高さを手で印すだけでもよいとしています
- 即席の目印は作らない(Repz): 即席の壁や設備、低い天井に向けてサンドバッグや硬い物を投げないこと、不安定な固定具や頭上の目印を使わないことを挙げています。的が無い場合は、危ない目印を即席で作るより動きの要素を安全に練習し、大会前に正規の的を使える場所を探すよう勧めています
壁に投げずにボールを使う方法としては、メディシンボールを床に叩きつける「スラム」を、Recharge Fitness(壁の代わりに床に向けて)とsimongPT(爆発的な力を鍛える)の2件が挙げています。Repzは、許可された場所で、メディシンボールややわらかいボールを安全に投げる方法を挙げています。
的の高さは女性2.70m・男性3.00mです。Recharge Fitnessは、ジム向けの機材を挙げたリストの中で、ウォールボールを安全に練習するには十分な天井の高さと壁の広さを確保するよう書いています。Repzは、代用の練習を安全に行うための注意として、スクワットとプレスの動きをウォームアップしてから行い、動きを制御できる重さと回数にとどめ、着地・スクワット・頭上での姿勢が崩れたら止めるよう勧めています。

このほか、ダンベルのプッシュプレス、ボックスジャンプからのショルダープレス(いずれもsimongPT)、ランドマイン(床に片端を固定したバー)を使ったスクワットからのプレス、マシンでのインターバルの直後に行うスクワットからのプレス(いずれもRepz)は、5件のうち1件だけが挙げている方法です。自宅でボールを揃える場合の重さの選び方と、日本で買える製品はHYROXの自宅トレーニング器具の選び方にまとめています。
大会前に本物のボールと的で練習する
代用で補えない「ボールを受ける・的に当てる・100回のリズム」は、本物のボールと的で練習するしかありません。複数のトレーニングガイドが、大会前にその機会を作るよう勧めています。
- Hyrox Vault: 大会前の6週間のうちに一度でも、ウォールボールのあるジムに行って実際の動きを体験する。同じサイトの別の記事では、大会前の4〜6週間に1〜2回でも本物の器具で練習すればウォールボールのリズムとテンポを体験できるとして、1日券やゲスト利用でもよいので使うよう勧めています
- Repz: 大会が近づいたら、代用の一部を、自分の部門の重さと的で行う正規のウォールボールに置き換える
- Gymshark: 器具が揃わない場合は、大会前にHYROXのトレーニングクラブを数回訪れ、本番で行う種目に慣れておく(ウォールボールに限らず種目全般について)
パートナーとミックスダブルスで出る場合、ボールは2人とも6kgですが、的の高さは投げる本人の性別で決まるため、女性は2.70m、男性は3.00mと異なります。本物の的で練習するときは、それぞれ自分の高さの的で投げておくと本番と同じ条件になります。
ウォールボールの設備を確認できたジムはウォールボールのページに、全国の練習場所は全国でHYROXの練習ができるジムにまとめています。クラスや体験会で何をするかはHYROXのクラスや体験会では何をする?を参考にしてください。器具が無いときの練習全般は自宅でできるHYROXの練習にまとめています。ボールを買う場合の重さと値段は、HYROXのウォールボールは何kgを買う?にまとめています。
KEY TAKEAWAYS
- ボールや的が無いときのウォールボールの代用で、最も多くのトレーニングガイド(5件中4件)が勧めているのはスラスター
- 重い本や水を入れた容器でもできる「スクワットと頭上へのプレスを組み合わせる」方法も3件が挙げている。器具が何も無ければ、スクワットから頭上へ手を伸ばす動き(2件)がある
- 代用で補えるのは、しゃがむ深さ・脚で押し上げる力・頭上での姿勢まで。ボールを受けるリズム、的に当てること、100回投げたときの肩の疲れは再現できない
- ボールはあるが的が無い場合は、自分で高さの印を付ける方法(Recharge Fitness)と、即席の目印を作らず正規の的を探す考え方(Repz)に分かれる
- 大会前の4〜6週間に1〜2回でも、本物のボールと的で練習しておくとリズムとテンポを体験できる(Hyrox Vault)。ミックスダブルスは2人で的の高さが違う
NEWSLETTER
HYROXの情報を続けて知りたい方へ
練習や大会の新しい記事・最新情報をメールでお届けします。登録はメールアドレスだけで、いつでも停止できます。
ご登録の前にプライバシーポリシーをご確認ください。